新環境を迎えて

2012年後期シーズンがやってきました!
半年に1度訪れるビッグイベント”制限改定”を迎え、各所大いに盛り上がりを見せています。
今回も毎度よろしく環境に多様な変化がもたらされた訳ですが、まずは先日確定したそのリストの方に目を通してみましょう。


【新禁止】
氷結界の龍 ブリューナク
未来融合−フューチャーフュージョン


【新制限】
(緩和)月読命
(緩和)スポーア
レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン
カオス・ソーサラー
イビリチュア・ガストクラーケ
甲虫装機ホーネット
甲虫装機ダンセル
発条空母ゼンマイティ
血の代償


【新準制限】
(緩和)デブリドラゴン
(緩和)神秘の代行者アース
(緩和)名推理
(緩和)聖なるバリア−ミラーフォース−
レスキュー・ラビット
魔界発現世行きデスガイド
E−エマージェンシーコール
強欲で謙虚な壺
ヒーロー・アライブ
召集の聖刻印


【無制限】
(緩和)マシュマロン
(緩和)ネクロ・ガードナー
(緩和)光の護封剣
(緩和)レベル制限B地区
(緩和)デステニー・ドロー
(緩和)緊急テレポート
(緩和)魔法の筒


前期隆盛を極めた甲虫装機が大打撃の末沈静化し、環境は随分と落ち着きを取り戻し始めました。
甲虫装機ホーネットによる抑止力はカードの採択やプレイングを大きく制約していましたが、そのしがらみからもようやく解放されつつあります。
全体的な変化としては、定例通り主流デッキの劣化が推し進めた格好で、前期の流行が軒並みパワーダウンしています。
ここ最近の制限リストからは、「潰し切ろうとはせず、弱体化はさせるが選択肢として残す」という販売元の意向が見て取れますね。
準制限という中間的立ち位置が膨れつつあるのもその結果であると考えるべきでしょう。
発条空母ゼンマイティ・イビリチュアガストクラーケの両者規制は各々を軸としていたハンデスデッキを崩壊させましたが、先行1ターンのワンサイドゲームを目論むデッキに対するスタイルも一貫しており、期待通りの判断が下された格好です。
どちらのデッキも構築段階で大きな制約を求める上、攻防の矛先もじゃんけん・初手内容と技術の介入できない領域にあったため、目の上のたんこぶ的存在でした。


今回の改定は各デッキのパワーバランスの調整が主となっており、地味な印象が強いとの批難も見受けられましたが、環境に存在するデッキを拡張し縛りを無くすと言う意味合いでは良いリストかと思います。
使われないカードを積極的に解禁していく姿勢も大いに評価できます。


個人的に不満があるとすれば、血の代償が禁止でないことと、魔界発現世行きデスガイド等の扱いでしょうか。
代償は発動が確定できればよほどの下手を打たない限り確実にゲームを終わらせる、暴力的な1枚です。
六武の門もそうですが、使用する側に無償のアドバンテージが供給されるのは単純に問題で、環境に残しておくことに理由を感じません。
デスガイドの方は言わずもがな、未発売のカードが制限リストに載っている様が良好な状態とは思えませんから、こうした事態を皮切りに海外先行のシステムに歯止めがかからないものかと心苦しく思っています。
リリース時期のズレから来るカードプールの差異は仕方ないとしても、わざわざ海外オリジナル(その上明らかに強くデザインしたもの)を織り交ぜて意図的に環境に変化を与える様を常々疑問に思っています。
一部の人間にしか影響しませんが、今年の世界大会でも甲虫装機に対する慣れという点において、目に見える形で有利不利の発生が見られましたからね。


ともあれ、現状前環境に比べれば遥かに幅の広い選択を楽しめそうですので、この半年間は多種多様なデッキにトライしてみてはいかがでしょうか!


甲虫装機絶滅?

リリースされてから約1年間、トーナメントシーンを席巻し続けた甲虫装機は今回の9月制限を受けて大きくパワーダウンしました。


【影響箇所】
甲虫装機ホーネット→制限
甲虫装機ダンセル→制限


上記改定により強みであった
・連続した展開力の獲得
・盤面の抑止力
・奈落の落とし穴の回避
の3点が、失われこそしないものの大きく削がれたためです。
これを受け環境のデッキ群・カード採択は大きく変化し、これまで採用が敬遠されがちだったカードが続々と息を吹き返し始めました。
現在はその隙間を縫う形でキラートマトに主軸に置いたタイプの甲虫装機が残留勢力として根を張りつつあり、マークの薄さに助けられそれなりに戦えるデッキとして可能性の模索が行われています。
シェアの低下に伴い天敵であったエフェクトヴェーラーが姿を消し、簡単に効果の成立を見られるようになった事は追い風です。改定によるダメージは大きいですが悪いことばかりでもありません。
制限リストが確定し連日賑わいを見せるデュエルオンラインの環境でもそれなりの数確認でき、完全に姿を消した訳ではないのだと実感させられます。
いざマッチングしてみると、後述する聖刻と合わせ「実は有効牌がほとんど無い」といった事態に陥りかねません。
存在しているのだと言う事実を認識し、実際にマッチングが発生した際の戦い方等事前に検討しておくに越したことは無いでしょう。
次期環境の鍵の一つに次元の採用がありますが、次元の裂け目を用いるかマクロコスモスを用いるか次第で対甲虫装機に対するマッチングの影響は大きく変化します。

旧勢力の復旧と残留勢力の競合

甲虫装機の力が弱まったことにより、それ以前、つまり甲虫装機がリリースされる前に存在していたデッキ群が再び力を伸ばし始めました。
ラクリ・暗黒界・天使・六武衆がそれに該当し、ここに前環境からの生き残り組であるHERO・聖刻・ガジェット・水精鱗が加わる事で、9月を先取った今現在の環境を構成しています。
甲虫装機以前に存在していた天使の型はTG天使が主流であり、これは前回の制限改定時に大打撃を受け崩壊しましたが、今回のアース緩和を契機に天使というジャンル自体は人気を回復しました。
1年前の旧勢力と前期の残留勢力は一部を除き同じ時代を戦ったことがほとんど無く、現在はそのマッチングの相性を探り合うような展開が続いています。
現状頭一つ抜き出ているように思われるのはカラクリで、人気の高い天使やガジェットに強く、各デッキが動きの基盤を固める中明確に強い展開パターンを確立できているのは時期的なアドバンテージと言えるでしょう。
多様なデッキの存在する環境初頭において、相手デッキに依存せず自分本位の展開を行えることは大きな意義を持ちます。


また、9月を迎える前の現在時点でも新制限における大会は開催されており、今日日までの2大会では共に聖刻が勝ち名乗りを上げました。
各人環境の読み、メタの在り方がまとまりきっていない節があり、ワンショット系のデッキに対して諸さを見せてしまったように思われます。
存在が認知されたこれ以降のイベントにおいてどのような対策が施されるのかが大きな見所となります。
今後の動向には注意深く目を通していきましょう。Duel Entranceを要チェック!


王道カラク

近年リリースされてきたテーマの中でもピカイチの展開力を持ち、無零・無零怒の両将軍を軸に次々と大型が繰り出される様は実に豪快です。
流行の最先端を走った1年前と比べ特に獲得したようなものは無いのですが、代わりに失ったようなものもほとんどありません。全盛期となんら変わらぬ動きを実現可能です。
一応の新戦力としてカウントできるのは、機械軸ゆえの恩恵ギアギガントX、それに最新弾アビスライジングで獲得した太陽風帆船の2枚でしょうか。
サーチ手段の多いカラクリではギアギガントXの恩恵を感じづらい部分がありますが、九壱九の戦闘破壊ボーナスから単騎で辿り付けるメリットを持ち、他の4エクシーズはカラクリにとって取るに足らないものばかりなので選択肢としては優秀です。
またレベル4カラクリを少し大目に採用しつつブリキンギョを取り込むことでクロスを積極活用し、初動の安定化を図るパターンもありえ、構築のパターンは広がりを見せています。


太陽風帆船は展開力の底上げに用いられ、簡易融合と合わせ強力な場を築くのに有用性があります。
サイバードラゴンと異なり相手に依存しない展開が可能で、1ターン1回の制限がある簡易融合と何枚か差し替えて圧迫されがちなエクストラデッキのスロットを節約する手法も取れます。


過去の構築とほとんど変わらぬものを流用可能であることから比較的完成度の高いものを持ち込みやすく、環境初頭における有力株としてよく見られるのではないでしょうか。
しかしながら、それに捉われずこの1年間でリリースされたカードを見返し、構築の昇華を図ることが大切です。
過去の構築は皆々の知るところで、そこに依存していては自分が勝ち抜くための区別化を図りづらいためです。
環境序盤は挑戦あるのみです!


新環境における聖刻

海外で流行を見せたカオスドラゴンの余波を受ける格好でレッドアイズダークネスメタルドラゴンを失った聖刻ですが、終わりを迎えるどころか環境初頭にして既にその健在を示してきました。
レダメの喪失はグスタフマックスを失ったのと同義で、これによりキルに必要な最低枚数やライフの射程圏といったキル条件が非常に厳しくなっています。
海外環境で聖刻が全く流行らなかったのはこの問題が大きく、1ターンキルに必要なパーツの枚数はデッキの質の問題に直結するからです。
それでも今回勝利を掴み取れた要因として考えられるのは、
・天敵である甲虫装機が駆逐されたこと
・それに伴ったメインヴェーラー撤廃によるキルへの信頼性向上
・規制によりマークが甘くなったこと
の3点が挙げられます。
先に話した甲虫装機同様失ったものも大きいですが、同様に得たものもまた大きいという訳です。
また海外環境における不人気を上記で述べましたが、日本の環境にはプレアデス・トレミスの2種セイクリッドが控えており、これらを駆使することで1枚のレダメでもパーツ3枚キルを達成できます。


しかしながら、こうして結果を残し認知されることで当然問題も生じます。
レダメが1枚ゆえにエフェクトヴェーラー1枚で簡単に止まってしまうこと、デッキが割れていない場面でも見えたカードによって推測されうること(=ガバ伏せの発生)、検証が進められ出せるダメージの少なさが判明してしまうこと、等々今よりも勝ち辛くなることは明らかです。
それらを踏まえた上で今後どういった戦略を取るのかが大きな課題となることでしょう。


新勢力、水精鱗

環境初頭はメタが固まらず、デッキを温故知新の選択に委ねるプレイヤーが多い中、比較的新たなデッキタイプとして水精鱗があります。
前環境の終期にリリースされたこのテーマはまだ研究が進み切っておらず、使用者間でも構築がまばらで、多種多様の試行錯誤がなされている段階です。
しかしながら、僕自身が新環境に着手し様々なデッキを見てきた中でも、水精鱗の持つポテンシャルは非常に高い位置にあると感じられました。
見慣れないカードを連続で消費していく様子は初見であれば「よく分からない」の一言に尽きるかと思われますが、冷静になって一つ一つの動きを追っていくと無視できないレベルでのアドバンテージ獲得能力および抑止力を秘めています。
カードを捨てる動作が起点となっているため損を被っているような印象を受けますが、実際は間逆で最終的な盤面を見れば一目瞭然です。
場のカードにはあらかた触れることが可能で、水精鱗を相手にした際「これをしておけば安定」と言うような動作があまりありません。
その一方で海皇の狙撃兵によるアドバンテージの発生を抑止するために場を固めに行かなければならなかったり、アビスリンデやアビスフィアーの存在ゆえに安易な除去のプレイを許されなかったりといった縛りが多々あり、自分のペースでゲームをするのが非常に困難です。
アドバンテージが離れていくことに焦りを感じ、その差を埋めようと自滅を辿るような事態も発生しかねませんので、適切な対処を覚えるためにも一度手にとってプレイしてみることをお勧めします。

今後予想される環境の推移

今秋来日予定の海外先行収録組(EXP4)でまた一つ大きな転機を迎えることかと思いますが、それまでは現存の勢力が都度の変化に合わせて緩やかに精度を増していくはずです。
中でも伸び白が大きいのはリリースされたばかりの水精鱗で、テンプレートさえまともに固まり切っていない現在の状況からどこまで完成度を引き上げられるかが見所となります。初めに成果を挙げるのは一体誰か!
何せ存在するデッキの種類が多く、経験量・練習量が物を言いそうな時代となりました。
そんな時はただひたすら突っ走るのみです。やった分だけ経験としてのリターンが必ずあります。
なかなか面白い環境だと思います。色んな可能性を模索しながら今シーズンを楽しみましょうo(^-^)o


ではでは♪