CS総括 part4
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シーラカンス
インフェルニティがトーナメントシーンから姿を消して2か月が経とうとしています。
3月から8月にかけ、日本代表の排出こそ成せなかったものの、各地CSで多大な成果を上げ、旋風BFと並びメタの中心核を担ってきたこのデッキはこの9月度制限で徹底的な規制が予想されましたが、その対象になったのは《インフェルニティガン》の1枚のみ。
これはもしや、と考えたプレイヤーも多く存在したかと思います。
ですが、手札のモンスター処理、蘇生担当、ループ要因と1枚で多くの役割を兼ねていた《インフェルニティガン》はデッキの要であり、支柱を引きぬかれたインフェルニティはかくも脆くに崩れ去り、環境初頭こそ決勝トーナメントに駒を進める事もありましたが、他のデッキが完成度を増すごとにその存在は淘汰され、今ではすっかり数を減らしてしまいました。
「パーツさえ揃ってしまえば勝ち」の認識が強いワンターンキルデッキですが、当然その最終目標に行き着く事が最大の難関で、成就に至るためには繊細なプレイング、そして何より綿密に計算された構築が必要です。
10年もの時を経て膨れ上がったカードプールを有する遊戯王では、強力すぎるゆえに禁止や制限の指定を受けたものを除いてもまだ幾つかのワンターンキルを可能とするギミックは残されていて、シーラカンスも現行するワンターンキルデッキの内の一つです。
さて、長い前置きになりましたが、インフェルニティの例で挙げられているように、ワンターンキルデッキにとって最も重要なのは「効率の良さ」です。
なるだけ小さな消費で、なるだけ小さなリスクを選び、なるだけ大きなアクションへと繋げる訳です。
特定のキーカードが制限カードである場合、それを手中に引きいれるのは大変な手間がかかりますし、サーチを駆使しても絶対的に時間がかかるので、その分相手に「ターン」と「ライフ」を差し出している事になり、それは一つの「消費」です。
自分は何もしていないつもりでいても相手は着々とアドバンテージを得ています。
関東CS4位/ぽいずん モンスター(24枚) 冥府の使者ゴーズ 竜宮の白タウナギ 魔知ガエル×3枚 超古深海王シーラカンス×3枚 粋カエル 光と闇の竜(ライトアンドダークネス・ドラゴン)×2枚 鬼ガエル×3枚 黄泉ガエル フィッシュボーグ−ガンナー×2枚 バトルフェーダー スノーマンイーター×2枚 クリッター オイスターマイスター×3枚 魔法(12枚) 封印の黄金櫃×2枚 大寒波 死者蘇生 強欲なウツボ×3枚 強欲で謙虚な壺×3枚 ブラック・ホール ハリケーン 罠(4枚) 聖なるバリア−ミラーフォース− 激流葬 トラップ・スタン×2枚 エクストラデッキ A・O・J カタストル アームズ・エイド×2枚 ギガンテック・ファイター スクラップ・ドラゴン スターダスト・ドラゴン フォーミュラ・シンクロン×3枚 ブラック・ローズ・ドラゴン ミスト・ウォーム 神海竜ギシルノドン 氷結界の龍 グングニール 氷結界の龍 トリシューラ 氷結界の龍 ブリューナク サイドデッキ D.D.クロウ×3枚 バトルフェーダー マインドクラッシュ 黄泉ガエル 砂塵の悪霊×2枚 邪神の大災害×2枚 水霊術−「葵」×2枚 粋カエル 氷帝メビウス×2枚
シーラカンスは自身の効果を通す事が出来れば自身1枚で全てを自己完結させる事が出来るため(動きは後述)単体で見た効率の良さはずば抜けています。
キーカードが制限カードで制約の多い「未来人造」や、同じく制約が多く、制限指定こそされていないものの同じように制約の多い「ガリス・バードマン・コアキメイルデビル」のようなデッキと比べてみると、シーラカンスは現存する他のワンキルデッキに比べて比較的優秀な部類に入ると言えるでしょう。
ではまず、シーラカンスの基本的な動きからおさらいしておこうと思います。
このリストに基づいて言えばシーラカンスから展開できるのは《竜宮の白タウナギ》1枚、《オイスターマイスター》3枚、《フィッシュボーグ−ガンナー》3枚の計7枚。
展開した魚は「攻撃宣言が行えず効果も無効化」されているので当然シンクロに使うぐらいしか用途がありません。
一応シーラカンスには魚族モンスターをリリースする事で自身を対象に取る効果を無効化する能力がありますが、この最上級モンスターを押し通すためには相手の伏せカードを尽く駆逐しておく必要があり、その主たる手段は《大寒波》《ハリケーン》になってきますから、相手にカードの消費を促せず、そのような状態でターンを返すのは非常に危なっかしいため、殺しきるに越した事はありません。
ここで押さえておくべきは、もちろん展開された魚を使ってのシンクロパターンです。
チューナーはフィッシュボーグに依存しているので、シンクロパターンはレベル1+水属性モンスターというのが主体になってきますが、《フォーミュラ・シンクロン》を絡めることで制約を取り払う事が出来、シンクロのパターンは無限に広がります。
ここで役立つのが《オイスターマイスター》で、「強制的に」トークンを生み落とす効果が非常に有用です。
戦闘以外で墓地に送られれば効果が発動するので当然これはシンクロ召喚でもトリガーしますし、強制効果なので召喚処理を挟んでも発動タイミングを失う事はありません。
また生み出されたトークンはレベル1の水属性で、フィッシュボーグとのシンクロが可能です。
基本的な展開パターンはシーラカンスから呼び出した2体ずつの《オイスターマイスター》と《フィッシュボーグ−ガンナー》を用い、《氷結界の龍 ブリューナク》《神海竜ギシルノドン》《超古深海王シーラカンス》の3体を並べてのアタックで勝利を目指します。
この展開の場合、シーラカンスを召喚した時点で効果起動に必要な手札1枚+ブリューナクでバウンスするための手札枚数が確保できていれば無事キルが成立し、残りの手札はコンボの過程でフォーミュラが補給してくれます。
場の状況次第では《竜宮の白タウナギ》を使用したり、《氷結界の龍 グングニール》《氷結界の龍 トリシューラ》あたりに切り替えることもできます。
次に「いかにしてシーラカンスの効果の発動に結び付けるか」ですが、シーラカンスというデッキジャンル自体は随分古くから考えられていて、その方法は多種多様です。
何かしらの方法で墓地に送り込んだ後《ファントム・オブ・カオス》を狙ってみたり、《大波小波》や《スター・ブラスト》を使ったり、もしくはそのいくつかを併用したり、と様々な形の試行錯誤がなされてきました。
今回のこのリストではカエル軸によるアドバンス召喚を狙った仕様になっています。
前環境を席巻した帝に代表されるようにカエルには《黄泉ガエル》《粋カエル》の各種リリース要因が用意されており、それをサポートする《鬼ガエル》が非常に優秀で、特殊召喚効果を用いる事で自身もまたリリース要因として活用することができます。
アドバンス召喚を行いやすいようにデッキを特化させ、追加のフィニッシャーとして《光と闇の竜》が採用されているのも特徴的です。
《超古深海王シーラカンス》は墓地からの蘇生も可能なので、鬼ガエルのコストなどで墓地に落とし込んでおけば《光と闇の龍》が破壊された際蘇生先として選択する事もでき、デッキ全体のシナジーを意識した作りになっています。
・問題点
デッキの運用、構築に触れたところで、幾つかの問題点を挙げたいと思います。
まず第一に、シーラカンスに頼り過ぎた構成をとっている事。
デッキ全体がシーラカンスの召喚を前提として構築されているため、シーラカンスを引きいれる事が出来なければそのほとんどがうまく機能しません。
自身3枚に加えて万能サーチの《封印の黄金櫃》、ドローの鉄板《強欲で謙虚な壺》、デッキ全体が水属性で固められている点を活かした《強欲なウツボ》をフルに採用し、デッキを回転させる事でそのドローに期待していますが、最上級ゆえにサーチ手段が少なく運に頼る部分が大きくなっています。
上で挙げたように《光と闇の竜》を追加する事で決定力不足を解消しようと言う試みもありますが、環境の主流である旋風BFがたくさんのフリーチェーンカードを採用している手前《光と闇の竜》にゲームを決定づける力は無く、結局のところシーラカンスに頼った部分が大きい事は否めません。
次に、安定性に不安が残る事。
単体ではロクに機能しないコンボパーツを多く採用しており、リストの段階でも時として悲惨な事故に遭遇してしまう事は容易に想像がつきます。
シーラカンスからのサーチ先である《オイスターマイスター》や《フィッシュボーグ−ガンナー》は手札で浮いてしまう以外にも、過剰に引き過ぎるといざシーラカンスの召喚に成功してもワンターンキルを達成できなくなるという致命的な問題を抱えています。
またフィニッシャーである《超古深海王シーラカンス》《光と闇の竜》は最上級モンスターである以上、リリース要因を確保できていない状況では何の役にも立ちませんし、逆にこれらを持たない状況での《黄泉ガエル》を筆頭とするリリース要因は命を繋ぎとめる壁程度にしかならず、《BF-蒼炎のシュラ》の蔓延る今の環境では破壊耐性の無い壁モンスターを安易に配する事は非常に危険です。
キルの成立が難しい状態での手札にシュラ・ブラスト・ヴァーユからなるお馴染みのトリシューラを食らっていてはまるでゲームになりません。
最後に、2ゲーム目以降の問題です。
いくら問題点があるとは言え決まれば一撃のワンショット体制をとっている手前コンボパーツさえ揃ってしまえばゲームを終わらせるのは容易で、案外アッサリ1ゲーム目を取れてしまう事も珍しくありません。
問題は2ゲーム目以降の戦いで、このデッキもワンターンキルデッキにありがちな「コンボパーツに枠を取られ過ぎていてサイドチェンジをロクに行えない」というケースが例外なく当てはまり、2ゲーム目以降はより深刻な問題となっています。
今回のリストでは《氷帝メビウス》や《邪神の大災害》を採用する事で伏せに対する意識を徹底しており、《D.D.クロウ》が効きづらいというシーラカンスの特性を活かして伏せ除去に狙いを絞った形を取っています。
しかしながら、これらのカードを投入すると言う事はメインデッキの何かを諦めての入れ替えという事になりますから、確実に動きは落ちますし、少し不安が残ります。
・環境での立ち位置
とにもかくにも打たれ弱いこのデッキ。
全く伏せないので相手の動きにはほぼ不干渉。恐ろしいスピードでライフが減って行きます。
かといってそれを嫌い壁モンスターを配そうものなら突き刺さるシュラ。
上で挙げたようなトリシューラコンボを浴びてしまっては一層勝ちは遠ざります。
僕がこのデッキを調整していた際は《フロッグ・バリア》の採用を考えたぐらいで、負けパターンのほとんどが高速展開によるライフの損失でした。
それに長けたBFが蔓延る今の環境では少々やりづらい面もありますが、的確な「延命処置」を図れる工夫を凝らせば、「寒波・ハリケーンに弱い」という弱点を克服できずにいるBFに一矢報いる事は十分に可能でしょう。