マスターデュエルで100年ぶりに遊戯王した話

タイトルの通り、マスターデュエルのリリースをきっかけに100年(8年)ぶりに遊戯王をプレイしたので、再びこの遺跡を掘り起こすことにした。これより前、このブログに記事を投稿したのは2013年の12月6日が最後。約8年ぶりの更新になる。

 

この間何をしていたのかというと、遊戯王をプレイしなくなった2014年以降はMTGマジック:ザ・ギャザリング)に興じ、8年の月日を費やした。内現在を含む5年は公式認定のプロを務めている。色々と成果はあったが、中でも遊戯王では成せなかった日本代表・国別対抗戦優勝は実に感慨深いものだった。自身のキャリアの中で、最も印象的な記憶として今も色濃く残っている。

ワールド・マジック・カップ2017 日本代表チーム

マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイトより引用

 

プロ・カードゲーマーとして、今日に至るまでを過ごしてきた。年に2桁近い海外遠征を含む数々のイベントに参加し、充実した生活を送った。近年はコロナの影響でそうしたものは無くなり、自宅からのオンラインプレイに限られている。正直言って、味気無い。近頃は海外を飛び回っていた生活を懐かしんでばかりだ。

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マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイトより引用


また、MTGのプロは今シーズンをもって廃止されることが明言されている。プロになってからの5年間は一度もその資格を失うことなく維持し続けてきたが、制度そのものの消滅には抗えない。17年続いてきたMTGのプロ制度は終焉を迎える。これまでずっと目指してやってきたものが、突如としてなくなる。プロとして参加する大会はまだいくつか残されているが、最近はぼんやりとした気持ちで臨んでしまっている。非常に空虚な気分だった。

 

そんな折、マスターデュエルがリリースされた。

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久方ぶりに遊戯王の字面を目にした時、とても懐かしい気持ちになった。MTGは人生で最も時間を費やした趣味だが、それより前は遊戯王だった。僕は本来飽き性でほとんどのことが長続きしないが、カードゲームだけは別で、MTGを8年、遊戯王は5年プレイした。今年34になるが、人生の少なくない時間を費やしてきている。伴い、記憶に残る思い出も多い。

 

この少し前に、自身の配信をスポンサードしてくれているsekappyの社内イベントに招待いただき、ゲートボールと呼ばれる過去の遊戯王環境をプレイする企画に参加していた。そのことも影響してか、自然に触ってみたい気持ちが沸いた。

ちなみにゲートボールという呼称は僕がまだ遊戯王を現役だったころに付けたもので、そのまま定着していて驚いた。いいのか…

 

マスターデュエルは現在の遊戯王OCGの約1年半前のカードプールおよびレギュレーションらしく、やや古い。とは言え「やや」に過ぎないので、8年ぶりのプレイともなれば、あまりの勝手の違いに浦島太郎状態であった。


まず、テキストが読めない。

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一応30半ばに差し掛かる年齢のため日本語の読解力はそれなりに持ち合わせているが、8年ぶりに見た遊戯王カードはテキスト量が10000000倍に増えていた。あまりの情報量の増加に脳が追いつかない。カード1,2枚なら何とかなるが、繰り返されるサーチやエクストラデッキから飛び出すカードのテキストが一々長いため、全てを理解することは困難。流れに身を任せて対戦相手の行動を見守っていたところ、ターンが返って来る頃には場に5体のモンスターが並んでおり、大体のモンスターには「無効にする」「破壊されない」「対象にできない」と書かれていた。手札も5枚ある。何が起きた。

 

少し余談を挟む。
MTGを始めてからは、遊戯王の情報は意図的に遮断していた。そのため、近年のカードは全くと言っていいほど把握していない。ペンデュラム召喚もあまり馴染みがないし、リンク召喚はサッパリ。MTGに専念するためというシンプルな理由もあるが、一番の要因は両者のゲーム性があまりに乖離し過ぎているため、価値観の認識に齟齬が生まれるためである。それを象徴するエピソードとして、僕の中で印象的だった2つの出来事がある。

 

1つは、MTGの実力者(直近の大きなイベントでも優勝した)が、《ブラック・ホール》を見て驚いたこと。「ノーコストの《神の怒り》とかヤバ過ぎでしょ!」と。

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現代遊戯王において、《ブラック・ホール》は全くヤバくない。なんなら僕がプレイしていた8年前の時点でも特にヤバくはなかった。MTGを知らない人のために言っておくと、《神の怒り》は4ターン目以降にしか発動できず、プレイするターンは他に何もプレイできない《ブラック・ホール》と思ってもらえればいい。遊戯王的には全く役に立たないが、MTGではかなり強いカードに分類される。

 

2つ目は、MTGのルールが少しわかる程度の遊戯王実力者(世界大会出場経験あり)にMTGのデッキを組んでもらったところ、《予言》が死ぬほど入っていた。

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遊戯王的に言えば、カード1枚で2枚引けるなどバグである。古の禁止カード《強欲な壺》が物語る。それが4枚もデッキに入れられるなどヤバ過ぎる。が、MTG的に言えば《予言》は全くヤバ過ぎないのである。この程度のカードならごまんとあるし、おそらくデッキに入れれば入れるほど弱くなる。カードを唱えるためのマナと、そこから生じるテンポの概念は遊戯王プレイヤーには全く無縁の代物である。

 

上記例は極端なものだが、カードの価値観とゲーム感が尽く異なるのは間違いない。MTGを始めた頃自分が強いと感じたカードは、遊戯王的には強そうなものだったが、MTG的にはサッパリだった。それまでの自分の価値観でカードを選び、デッキを組み、プレイしたところ、全く勝てなかった。下手にこれまでのノウハウを当て込むことがかえって勝率を低下させていることに気付き、そこでこれまでの全てを捨てる決意をした。以降遊戯王の情報は遮断し、「MTG脳」に切り替えていた。

 

話を戻す。
そのため久方ぶりに見た遊戯王カードのテキストはどれも凄まじかった。ファンデッキに分類されるものであっても、どれもおぞましい勢いでカードアドバンテージを稼ぎ出し、モンスターを並べていく。配信をしながらプレイしていたのだが、視聴者に「これトップメタ?」と問いかける度「いや全然」との返答ばかり。にわかに信じがたい。みんなで僕を騙そうとしているのではないか。

 

初期デッキでは全く歯が立たなかったので、デュエルライブ(観戦モード)で興味のあるデッキを探すことにしたところ、エルドリッチに目が止まった。

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伏せカードを駆使して相手をいなしながら戦うスタイルは、現代遊戯王において唯一、過去に見覚えのある光景だった。これならギリギリやれるかもしれない。

 

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なにせプレイされるカードの全てがわからないので、一つずつ覚えていくしかないのだが、ゲーム中にそれらを読んでいる時間が無い。1枚ごとに効果が複数あるのが基本で、テキスト欄ギッチリの大ボリューム。大抵のデッキはテキストの長いカードからテキストの長いカードをサーチしてくるので、地獄連鎖。持ち時間の480秒では到底足りない。何もわからずカードをプレイしたら無効にされ、破壊しようとしたら破壊されなかったなどザラである。

 

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そんな状態の人間にとって《スキルドレイン》は救世主で、長々しいテキストを全てなかったことにしてくれる。ラヴァゴーレムも同様。2体合わせて100万字のテキストを「1000ダメージ受ける」に変換してくれる。らくらくスマート遊戯王
試合が終わった後、リプレイモードで改めてテキストを読み直す。なるほどこういうことだったのか。「お勉強フェイズ」と称し、視聴者にあれこれ教えてもらいながらデッキの動きを勉強させてもらった。

 

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マスターデュエルの良い点の一つとして、対戦相手のデッキを試合後に見れる点が挙げられる。これは実に素晴らしい機能。「このデッキいい!組みたい!」となった時すぐに真似できるし、デッキの動きを理解するのにも役立つ。自分と同じデッキを使うプレイヤーに当たった際なども「なるほどこう組むのもアリか」と唸らされる。非常に助けられているし、楽しみな要素が増える。どんどん対戦したくなった。

 

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最近ではプランキッズが気になった。デッキリストを拝借さ(パクら)せていただいたので、余裕ができたら組んでみたい。

 

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また遊戯王カードの中で最も好きで、最も思い入れのある《レスキューキャット》も現役の強さを持つらしい。これもぜひ使いたい。いつ見ても愛くるしい。

 

対戦相手のデッキのことは何もわからないが、勝利しつつ、後で効果も覚えられると言うこと無しの状態で最初の期間を楽しめた。少なくとも僕にとってのエルドリッチは良い選択肢だったと思う。妨害されることが気に入らないプレイヤーも多いと思うが、人によって様々な事情があるので、どうかご容赦いただきたい。伏せカードを多用するデッキは昔から嫌われる傾向にあった気がする。目に見えた妨害の山を相手にするのがストレスなのは理解できる。個人的には、それを突破していくのも楽しかったものだが。

 

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エルドリッチは罠デッキに該当するらしい。僕が現役の頃の罠デッキ、特に《スキルドレイン》を扱うものは《神獣王バルバロス》のようなガタイのいいモンスターで攻める直線的なビートダウンデッキだったが、「現代版スキドレバルバロス」は格が違った。《スキルドレイン》が無くとも十分に戦え、先行展開にも対抗でき、バルバロス(と呼ぶにはあまりに失礼)もサーチ可能で、伏せカードも尽きることがない。《ライトニング・ストーム》や《ハーピィの羽根帚》で伏せカードを4枚壊されても勝ったりする。(まず《ハーピィの羽根箒》が使えることにも驚いた)

 

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その他、LL鉄獣と呼ばれるデッキを構築し、攻める遊戯王も体験してみた。回った際の展開力は圧巻の一言で、エルドリッチの罠を駆使した駆け引きも楽しいが、これも違った面白さがある。複雑な展開パターンを解き明かす楽しさは遊戯王の醍醐味の一つだと思っていて、あーでもないこーでもないと友人らと議論に明け暮れた日々を思い出した。丁寧に回し方を指導してくれる配信視聴者の皆さんに感謝。

 

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昔僕がプレイしていた頃にも展開パターンなるものを持つデッキは存在したが、難解さが段違いである。実際にカードを動かして勉強したかったので、スプレッドシートで「学習ノート」を作成し、サイバー一人回しをして覚えた。まだまだ拙いが幾分マシになったろう。

 

昔に比べて展開が複雑になったのはおそらく以下が要因。

  1. EXモンスターゾーンが追加されたことでカード領域が広がっていること
  2. リンクモンスターが追加されたことで展開に使うカードの種類・パターンが増加していること
  3. 管理するリソース量が増加した(墓地から使えるカードが増えた)ことで考えなければならい点が増加していること

特に難しいと感じたのが②で、展開にエクシーズ・リンク(デッキによってはシンクロやペンデュラムまで)が混合し、多彩な出し入れがある。既存のデッキやパターンを見て、これらを考案した人々は全員天才だと思った。ゼロベースで見つけられる気がしない。尊敬。

 

上記LL鉄獣のプレイを学ぶ際、ギャグナさんという方がお書きになられているnoteを参考にしたのだが、「基本パターン」と呼ばれるものを見て驚愕した。

ラクトールefキット落としキットefナーベル落としナーベルefケラスサーチケラスefコスト切ってケラスssケラスefコスト4枚シュライグssケラスシュライグでフェリジットssシュライグefコバルトサーチフェリジットefコバルトssコバルトefセレストサーチセレスト召喚コバルトセレストでリサイトssリサイトefカナリーサーチリサイトフェリジットで王神鳥ssカナリーef対象セレストで一緒にssセレストefバードコールサーチカナリーセレストでリサイトssリサイトef(セレストを外す)ターコイズサーチバードコール発動サファイアサーチターコイズssターコイズefリサイトssセレストefリサイトに素材埋めリサイトefナーベルサーチリサイト×2で未来王→未来龍王サファイアefナーベルと一緒にssナーベルターコイズサファイアでロビンssサファイアefロビンに素材埋め(セレスト以外)

 

LL鉄獣 応用展開編より引用

呪文。慣れれば何とか読み解けるが、はじめは一切頭に入ってこなかった。このような展開はあらゆるデッキで標準レベルのようだ。どんなデッキも素早く巧みに使いこなすプレイヤーたちはカッコいい。マスターだ。

 

様々な変化はあれど、自分が昔感じていた「遊戯王らしさ」みたいなものは今も残っているなと感じた。

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《灰流うらら》を筆頭とした手札誘発の強化・多様化によりはじめはゲーム感の変化に戸惑ったが、デッキによっては伏せカードを使った攻防も楽しめ、展開デッキに見出す醍醐味も共通したものがある。8年の時を経ても変わらずの面白さがあった。

 

今のところは非常に楽しめている。マスターデュエルはとても手軽で、モバイル版もサクサク動く。既に1000万ダウンロードを達成しているようで、今後も期待大。しばらくは継続してプレイしたいと思う。

前述の通りMTGのプロプレイヤーとしての活動が終わりに向かいつつあるので、今後の人生について考えていくフェーズに差し掛かっている。カードゲームは楽しいし、趣味として今後も取り組み続けたいと思っている。


日頃は下記で配信をしていて、主にMTGとマスターデュエルをプレイしていこうと思っているので、時間が合えば是非見てほしい。

 

ブログに関しては、今はまだ語れるほどのものがないので、また気が乗ったら何か書こうかな。

 

以上、日記でした。サービスの移行でいつの間にかタイトルが変わっていたので、これも元に戻しておく。くされにっき。