墓地BFのススメ・後編 - 其の一

こんばんは!
前回に引き続き、墓地BFガイダンスの第二弾です。
最後にちょろっとお話ししたように、今回はマッチの2本目以降の戦術の指針、及びサイドチェンジについて書きたいと思います。


前回の続きと言う事で、本来はサイドチェンジの内容とその説明程度で終わらせるつもりでしたが、少し思うところがあり先二項では有用なサイドデッキの在り方について記させて頂きました。
真六武衆がリリースされた今、デッキ構築・戦術共に大きく変更される可能性がありますから、サイドチェンジの内容だけでは今後に繋がらないという事が一つの理由としてあります。
それよりももっと大きな理由として、こうしてサイドチェンジの仕方を公開する事には大きな問題があるからです。
それは「公開してしまった時点でそのサイドチェンジの価値は失われる」と言う事。
当然ですよね。相手が「何を抜いて、何を入れてくるのか」が把握できていればそれに合わせ打つ事が出来ますし、こちらの意図を相手が知っていればそうでない方向に動かれて戦略が全て水の泡となってしまう可能性もあります。
僕がよくコメントの返信で「サイドチェンジの内容に関してはお答えできません」としているのはこうした事情があるためで、今回のような環境の節目でもない限り今後もそういった質問には一切答えられませんのでご了承ください。
また、後述する各デッキへのサイドチェンジも、少なくともこのブログの記事を見た方との対戦においてはほとんど有効に機能しないと思いますから、丸っきりの真似事ではなく、根底的な理念の部分を読み取っていただければ、と思います。
それでは本題へ。
最初はサイドデッキの善し悪しに関するお話からさせていただきます。
サイドデッキの話を進めるに当たっては、まずはどのようなサイドデッキが有効であるかを知っておく必要があるでしょう。



1.良いサイドデッキ&悪いサイドデッキ

僕が遊戯王を始めてから数年が経ちましたが、自分自身のスキルアップを1番実感できたのは「良いサイドデッキが組めた時」でした。
サイドデッキの構築は自分のデッキの欠点・それを補う手段・現存するカードプール・環境に存在するデッキへの解答・メインデッキとの調和等々、その全てを把握しておく必要があり、プレイヤーの構築レベルが如実に反映される箇所であると言えます。
僕はチャンピオンシップ(以下CS)の上位デッキが公開された際は、メインデッキにざっくりと目を通した後、サイドデッキを入念にチェックします。
もちろん革新的なアイディアの有無を確認したいのもありますが、サイドデッキの構築にはその構築者の用いたコンセプトや意図が見て取れる事が多いので大変参考になります。
ここ最近のCSだとNANAのサイドデッキが1番好印象を持てました。

サイドデッキ
D.D.クロウ×3枚
スノーマンイーター×3枚
ブラック・ホール
マインドクラッシュ
王宮の弾圧
我が身を盾に
邪神の大災害
転生の予言
魔のデッキ破壊ウイルス
抹殺の使徒
冥府の使者ゴーズ

用途がハッキリしており、上手い具合にメタを散らしているのでサイドデッキの在り方としては大変優れた部類に入ると思います。
その理由に関してはすぐ後でお話ししますから、逆に悪いとされるサイドデッキがどのようなものなのかを先に挙げておきます。

サイドデッキ
スノーマンイーター×3枚
砂塵の大竜巻×3枚
閃光を吸い込むマジック・ミラー×3枚
天罰×3枚
連鎖除外(チェーン・ロスト)×3枚

例えばこれです!
出来の悪さはピカイチで、悪例としては最高レベルの逸品と言っても良いでしょう。
メインデッキというものは自身の考え抜いた最高のバランスで構築してあるはずですから、こういった「各種3枚」のような融通のきかないサイドデッキを組んでしまうと入れ替えがとても難しくなってしまうんです。
また受け手となる罠カードの比率が高すぎるため、これでは早い展開に追いつく手段を持ちません。
サイドデッキの構築に関して大切なのは「メインデッキのどの部分と入れ替えるか」という点で、相手のデッキに対して有効なカードを取り入れながらも、デッキそのものの動きを損なわないよう注意を払う必要があります。

効果がありそうだから…と闇雲に頭数を揃えても、その全てをメインデッキで活用するのは困難極まりなく、実際本番に臨んでみると「入れ替えきれない」事態が発生し、折角のサイドカードを腐らせてしまう事があります。
またその一方で、想定外のデッキとのマッチアップに遭遇し「入れるものが何もない」なんていう事態に見舞われる事も少なくないでしょう。
同じようなカードを集中的に投入してしまうと、ドローの偏りが発生した際本来ゲームを有効に進めるはずだったサイドカードが事故要素へと姿を変え、足を引っ張ってしまう事もあり、何枚引いても有効ないしは引けるか引けないかがゲームを左右すると言えるぐらいのカードでも無い限り、積み過ぎは禁物です。
《閃光を吸い込むマジック・ミラー》のような永続カードは何らかの要因で破壊されない限り2枚目以降が活きてくる事はまずありませんし、特にライトロードのようなデッキを相手にする場合は、効果を差し引いても高い攻撃力を要しているため、打点の攻略という課題も残されている都合これ1枚では完全な解答にはなりえません。
そんな状態でこれを重ねて引き込むと「勝因」に繋げるためのサイドチェンジが「敗因」に成り果ててしまう可能性もあるのです。
「ライトロードが苦手だからとりあえず《閃光を吸い込むマジック・ミラー》!」なんていう考えはまるで浅はかです。
この後詳しく紹介しますが「なぜ勝てないのか」が重要なのです。


ここで上に挙げたNANAのサイドデッキをもう一度、今度はメインデッキと一緒に確認してみます。
メインデッキとサイドデッキは合わせて一つのデッキですから、全体像を把握しておくのは大切な事ですね。

モンスター(18枚)
魂を削る死霊
ダーク・アームド・ドラゴン
BF−大旆のヴァーユ
BF−蒼炎のシュラ×3枚
BF−疾風のゲイル
BF−黒槍のブラスト×3枚
BF−月影のカルート×3枚
BF−極北のブリザード×3枚
BF−暁のシロッコ×2枚

魔法(11枚)
死者蘇生
黒い旋風
月の書×2枚
強欲で謙虚な壺×3枚
闇の誘惑
ハリケーン
サイクロン×2枚

罠(11枚)
奈落の落とし穴×2枚
神の宣告
次元幽閉×3枚
激流葬
ダスト・シュート
ゴッドバードアタック×3枚

エクストラデッキ
A・O・J カタストル
A・O・J ディサイシブ・アームズ
BF−アーマード・ウィング
BF−アームズ・ウィング
BF−孤高のシルバー・ウィンド
インフェルニティ・デス・ドラゴン
ギガンテック・ファイター
ゴヨウ・ガーディアン
スクラップ・ドラゴン
スターダスト・ドラゴン
ダークエンド・ドラゴン
ブラック・ローズ・ドラゴン
マジカル・アンドロイド
氷結界の龍 トリシューラ
氷結界の龍 ブリューナク

サイドデッキ
D.D.クロウ×3枚
スノーマンイーター×3枚
ブラック・ホール
マインドクラッシュ
王宮の弾圧
我が身を盾に
邪神の大災害
転生の予言
魔のデッキ破壊ウイルス
抹殺の使徒
冥府の使者ゴーズ

メインデッキは至ってシンプルな罠型旋風で、特に変わったところはありません。
実に綺麗なリストでテンプレート的なものだと言えるでしょう。

肝心のサイドデッキの方ですが、2種類の3枚積みカードと9種9枚のカード群を合わせた15枚の構成を取っており、先の話に当てはめていくのであれば《スノーマン・イーター》と《D.D.クロウ》は「何枚引いても有効」と呼べる部類で、それに沿った充分な枚数が投入されています。
《スノーマン・イーター》はここ最近のリストで非常によく見られるカードで、主な投入先となるビートダウン系のデッキ相手には除去に壁と文句無しの活躍を見せる、サイドカードの代名詞のような存在です。
《D.D.クロウ》は少し「何枚引いても有効」という説明から逸れてしまうように感じる1枚ですが、BFデッキにおけるこのカードは鳥獣族である事を活かした《ゴッドバードアタック》の媒体も兼ねれるため、最悪余剰分は処理が可能ですし、デブリダンディ系列のデッキ相手には「引けるか引けないかがゲームを左右する」レベルのカードでもありますから、適切な枚数であると言えるでしょう。
それ以外の部分である1枚だけの搭載、俗に言う「ピン挿し」ですが、これは上でも説明したようなカードの重なりを危惧している場合がほとんどで、メタの手段を散らす事で複数枚引いた場合でも活きてくるような配慮がなされています。
例えばこのデッキがデブリダンディのようなデッキを相手にした際は《D.D.クロウ》《王宮の弾圧》《転生の予言》《魔のデッキ破壊ウイルス》《抹殺の使徒》あたりのカードの投入が候補に上がると思います。

《魔のデッキ破壊ウイルス》は決定力の高さが売りの強力な1枚ですが、発動条件の達成が若干シビアで下積みが必要なため、その間を突かれて先だった展開をされたり《盗賊の七つ道具》のような防御策を合わせられてしまうデメリットが存在します。
一方の《抹殺の使徒》は裏守備さえ確認できれば気軽に発動できますし、《ライトロード・ハンター ライコウ》や《ダンディライオン》のようなカードを除外する事が出来れば決定打にも成り得ます。発動条件も緩く速攻性に長けているのがメリットですね。
どちらのカードもハマった時の強さは折り紙付きですが、発動条件を満たせなかったり、そんな状態で重なったりしてしまった時は苦しい展開を迫られやすいという性質を持ち合わせています。
そこで今回のように役割の違うカードを別々に搭載する方法を取る事で、戦略に幅を持たせつつ、2枚を引いてしまった場合でもしっかりと機能を果たすように狙いを付けている訳です。
《魔のデッキ破壊ウイルス》や《抹殺の使徒》は何度も発動するのは難しいですが、各1回ずつなら現実的ですし、単にどちらかを2枚採用するよりも安定した手法であると言えるでしょう。
相手プレイヤーに両方の想定や対処を迫れるのも利点の一つですね。
40枚デッキにおける特定のカードをドロー出来る見込みは初手6枚の時点で15%あり、5ターン目までターンが進むとその数値は25%にまで伸びます。
一方2枚積んだ場合の確率はちょうどその倍くらいになります。
もちろん数を増した方が特定のカードをドロー出来る可能性は高まりますが、単一でもそこそこの期待が持てる事は覚えておいた方がいいでしょう。
また効果の異なるカードをメタの手段として分ける事は受け幅の広がりにも繋がります。
例えば《魔のデッキ破壊ウイルス》のようなカードはライトロードのようなデッキ相手には少し積みづらいカードですが、《抹殺の使徒》なら《ライトロード・ハンター ライコウ》を除去・墓地肥やしの要にしている最近の同デッキ相手には有効打になり得ます。
少し見慣れないデッキとのマッチングが行われた際にもカードの種類を散らしておくのは大変有効です。
僕は過去2度の選考会で想定外の相手に「ロクに入れるものが無い」状態で敗北しているので、対応できるデッキの幅を広げておけば、こういった場面でも有効になるケースがあります。

2009年度選考会
墓守猫/サイドデッキ
D.D.クロウ×3枚
サイバー・ドラゴン
ライトロード・ハンター ライコウ
強制脱出装置×2枚
砂塵の大竜巻×3枚
死霊騎士デスカリバー・ナイト×3枚
自律行動ユニット×2枚

事前に少し流れてきた墓地系のデッキを意識して《D.D.クロウ》を挿していたのですが、これが1枚でも《霊滅術師 カイクウ》ならば決定戦の内容は少し変わったものになったかもしれません。
《霊滅術師 カイクウ》は《召喚僧サモンプリースト》からサーチする事ができますからデッキともよくシナジーしますし、一枚を挿しておくだけでサーチカードによる間接的な水増しが可能ですから、事前にそこを意識しておくべきでした。
さらに言えば《砂塵の大竜巻》も3枚は必要ありませんね。伏せ除去が必要なのであれば1枚くらいは《邪神の大災害》でも良かったはずです。

2010年度選考会
インフェルニティ/サイドデッキ
D.D.クロウ×3枚
サイバー・ドラゴン×2枚
スノーマンイーター×3枚
ドッペルゲンガー×3枚
トラゴエディア
砂塵の大竜巻×2枚
自律行動ユニット

こちらは調整不足もありましたが《スノーマンイーター》や《ドッペルゲンガー》の3枚は重複してしまうとその後の展開を非常に圧迫しますし、何よりメタを絞りすぎたため対応がおざなりになってしまいました。
またこれらのカードは基本的に召喚権を行使しながら消費していく他なく、インフェルニティの特性であるハンドレスのシステムに大きく矛盾しています。
その部分をいくらか割き、《転生の予言》や《マインドクラッシュ》のようなユーティリティを代わりに用意しておくべきでした。


自分の失敗例もあるためこの点に関しては自信を持って主張できます!
メタの範囲はなるべく広く構え、対応策は複数手段で用意しておきましょう。
ただし、除去の影響を受けやすいモンスターカードに関しては多少多めの採用でも問題無いように思います。
デッキとの相性を考えて慎重に採用を検討すると良いですね。


それではいよいよ実際の構築について触れていきます。