墓地BFのススメ・前編

おはようございます!
今回は以前よりちょくちょく要望のあった墓地BFのプレイングやノウハウについて書きたいと思います。
始めに言っておきますが、凄まじいぐらいの長文ですのでお時間のある時にどうぞ。


今週末にはいよいよ話題の真六武衆がリリースされますね!
その強さや環境に与える影響力はDOの方で実証済みです。
ちなみにDOとはデュエルオンライン(Duel Online)というフリーのソフトウェアで、ネットワークを通して無償で遊戯王をプレイできる代物です。
既存のカードはもちろん、情報が確定している少し先のカードプールまでバッチリ使える大変ありがたいツールです。
遠く離れたプレイヤーとでも気軽に対戦できるため僕もこれはとても重宝させてもらってます。
興味を持たれた方は是非使ってみてください!
 ⇒DO(デュエルオンライン)のHomePage


そんなこんなで、六武衆の与える影響力が大きいのは間違い無さそうですから、殆どのデッキはその見直しが求められるでしょう。墓地BFも例外ではありません。
詳しくは後述しますが、後出し除去を基本とするこのデッキではシエンの存在は大変驚異的で、今のままの構築・戦略では遅れを取ってしまうのは明らかです。
そういう経緯もあって、今から記すプレイの手解きは軌道修正が迫られるかと思いますが、逆に不変のものもありますし、既存のアーキタイプに対する基本的な立ち回りは同じですから、全くの無駄という事にはならないと思いますし、おさらいのような感じで目を通して貰えれば丁度いいかと思います。
デッキの性質が動かない以上根本的な理論は通じていますからね。


さて、僕はこの環境に入ってから2ヶ月間、環境を跨げば1年に渡って墓地BFに触れてきた訳ですが、改めて思ったのはデッキパワーの低さです。

「強いデッキ」というものは、少しぐらいの2択を踏み外したり、時には盛大なミスをやらかしてしまっても、最終的には勝っちゃたりする事も珍しくないぐらい、強力な力を持っているものです。
その点このデッキは1つのミスがそのまま負けに直結しますし、とても繊細でか細く、張り詰めた糸の上を渡るようなプレイが求められます。
それではここらで肝心の「プレイのコツ」について、幾つかの段階に分けてその一つ一つを解説しようと思います。
これらの理論は他のどのデッキにも通じる部分もありますが、その場合はこのデッキではより重要であると解釈してください。
ではまず、デッキの最も基本的な概念である「ライフ支出」から。

1.ライフ支出

墓地BFの基盤となるテーマ、それは「アドバンテージの保持・獲得」です。
色々考える事はありますけど、この事はゲーム全体を通して常に思考の中心に置いておかなければなりません。
墓地BFには《終末の騎士》《ダーク・グレファー》《BF−大旆のヴァーユ》など単体では機能に不安を抱えるカードが多く搭載されています。
だからこそ自身のリソース管理は厳重に行わなければなりませんし、トップのめくり合いなんかになろうものなら単体の弱さが際立ち、強いカードの少ないこのデッキでは非常に不利です。
下級のラインも頼りないものばかりですし、なるべく多くの手札で常に選択肢を広く持てるようにしておく必要があります。

初心者の方にありがちな「後先を考えず出せるものを出す」のようなプレイはこのデッキでは特に許されません。
代表的なものは先行1ターン目の《終末の騎士》の召喚です。
絶対とは言いませんが、今の環境なら95%ぐらい無いプレイだと言えます。
昔の墓地BFは《BF−疾風のゲイル》《ネクロ・ガードナー》《異次元からの埋葬》が3枚ずつデッキに搭載されていたため、先行でこのアクションを取った後相手の攻撃を《ネクロ・ガードナー》でいなし、《BF−疾風のゲイル》が序盤の安定した返し手を保証、そうして消費された《ネクロ・ガードナー》や攻め手として消費した《BF−大旆のヴァーユ》《ゾンビキャリア》を《異次元からの埋葬》していく戦い方が中心となっていましたが、今ではそのいずれもが制限カードに指定されており、この動きを実現させる事は難しくなってしまいました。
加えてその時代の主流デッキは「墓守猫」で、《X−セイバー エアベルン》や《レスキューキャット》《召喚僧サモンプリースト》のような貴重な攻め手を消費することでしか《終末の騎士》を倒せなかったため積極的な召喚は割と有効なアクションでした。ワンターンキルに抑止をかけれるのも利点の一つです。
ですが、今の時代は旋風BF一色で、1年前のライトロードの頃もそうだったのですが「デッキの基盤を支えるほぼ全ての下級に戦闘破壊される」数字であるため、かなり高い確率で損をしてしまう訳です。
これでは冒頭で述べた「アドバンテージの保持」などままなりません。
知らず知らずのうちにリソースをなくしてしまい、気付いたら負けていたなんて言う状況も充分にあり得ます(原因は明確ですが)。
ではここで取るべき指針とは何なのか。
その答えが「ライフ支出」です。



アドバンテージを失ってしまう時ってどんな状況でしょうか?
色々ありますよね。戦闘破壊された時、《ダーク・アームド・ドラゴン》でカードを複数枚破壊された時、モンスター1体に《ライトニング・ボルテックス》を使った時、シンクロ召喚したシンクロモンスターが《奈落の落とし穴》で破壊された時、《氷結界の龍 トリシューラ》で手札と場のカードを除外された時。
このほとんどに共通する事があるのですが、お分かりでしょうか?
結局これらは自分が何かした結果なんですよね。
戦闘破壊されるモンスターを出したのも、《ダーク・アームド・ドラゴン》に破壊されるカードを出したのも、《ライトニング・ボルテックス》を打ったのも、シンクロ召喚したのも、《氷結界の龍 トリシューラ》に除外されるカードを場に出したのも(手札のみ例外ですが、相手もトリシューラを出すためにモンスターを消費しているので交換比率的には大差ありません)全て自分です。
一体何を…と思われるかもしれませんが、要は「動き出さなければアドバンテージを失う事は基本的にない」のです。
《魂を削る死霊》のハンデスのような例外もありますが、大抵の場合に言える事です。
《黒い旋風》を発動されたりライトロード効果を発動されたりしてアドバンテージを「得られてしまう」事はあるかもしれませんが、「失う」事はほとんどありません。
前述したように、墓地BFではなるだけ多くの手札を抱えて常に広い選択肢を見れるようにしておく事が大切ですから、「失わない」ということは凄く重要な意味合いを持っています。
しかしながら、何もしないとなると必然的に隙が生じますから、《冥府の使者ゴーズ》や《トラゴエディア》のようなカードの存在があるとは言えそれをケアしたアタックを繰り返される可能性は十分にありますし、場合によってはそれらを割り切ったアタックであっという間にライフをなくしてしまう事もありますから、先に挙げた《魂を削る死霊》のようなカードの存在も合わせるとかなりリスクの高い行動になります。

「ライフアドバンテージ」の言葉に表わされるように、遊戯王というゲームではライフはとても重要な要素ですからね。
ですが、逆にいくらライフがあろうとリソースが不足していては後の攻めや返しが満足に行えません。
ライフとアドバンテージのバランスの取り方は大変難しく、これはどのデッキにも共通している事です。
聖なるバリア−ミラーフォース−》や《激流葬》のようなカードの発動がそのいい例ですね。
相手モンスター1体に対して発動するこのカードは、カードそのものが持つ1対複数交換の可能性、将来的なカードアドバンテージ獲得の機会を破棄している事になりますが、発動しない事を選べば現時点でのライフというリソースを失う事になりますし、この判断はとても難しいものです。
ライフ支出というのは、幾らかのライフを相手に差し出す事で充分なリソースを「溜め込む」手法で、繰り返しになりますが墓地BFは単体では機能しづらいカードが多くあり、少ない手札ではゲームメイクが困難ですから、それの実現が困難なうちは最も効率的とされる延命処置を行うことで、稼ぎ出した数ターンを用い勝ち筋を見い出して行きます。


また、途中《冥府の使者ゴーズ》や《トラゴエディア》ような名前を出したがために、支出の方法がノーガードに限ったように見えてしまうかもしれませんが、決してそんなことはありません。
もちろんノーガードで構えることもありますが、これは相手の《ゴッドバードアタック》に代表される先置きの伏せカードに牽制されて動きを大きく制限されてしまうため、できる事なら避けたいプランです。
その時々に応じた最も損をしにくい布陣を敷いて置き、ブラフとしての役割を兼ねさせながらゲームを進めて行くのがベストです。
それができないようであれば相手の攻撃を甘んじて受け入れることになります。
妥協の守りはほとんどの場合いい結果を生みませんから、この場合は仕方ないですね。


さて、ここまではアドバンテージの保持、損失の抑制について書きましたが、ここからは肝心要の「獲得」についてです。

2.アドバンテージ獲得の機会

墓地BFには《ダーク・アームド・ドラゴン》や《異次元からの帰還》を絡めた強力な展開や特定の組み合わせによるワンターンキルも存在しますが、そういった展開の期待値は非常に低く、率先して狙うべきものではありません。
主な勝ち筋はアドバンテージ面で優位を確立させてからのビートダウンです。
そのアドバンテージを獲得する手段には《ゴッドバードアタック》のようなカードを使用するケースもありますが、ほとんどは「戦闘破壊」に頼ることになります。
《強欲な壺》のようなカードの存在を除けば、遊戯王のというゲームのシステム上最も効率よくアドバンテージを叩き出す方法は間違いなく戦闘破壊です。

《地砕き》のような単体除去と異なり消費なく相手モンスターを除去できるため、アドバンテージの獲得を見ていく上では最も理想的です。
よく旋風BFと比較されがちな墓地BFですが、最大の利点は「瞬間的に高打点を生成できる」ところで、《ダーク・グレファー》から《BF−大旆のヴァーユ》を捨てれば即座に2300の打点を確保できますし、《ゾンビキャリア》を介せば一度きりですが《氷結界の龍 ブリューナク》や《ゴヨウ・ガーディアン》のような強力なシンクロモンスターを召喚することができます。
基本的には《BF−アームズ・ウィング》の2300という比較的高めの打点を活かして相手モンスターの戦闘破壊を狙っていく戦い方になります。
「コスト」という言葉がマイナスのイメージを先行させる《ダーク・グレファー》ですが、《BF−大旆のヴァーユ》か《BF−暁のシロッコ》を墓地に送って効果を発動した場合は特に損失なく運用が図れますので、このデッキでは非常に頼りになる存在です。
そして、戦闘破壊を行っていく上ではその《BF−暁のシロッコ》そのものも重要な位置づけにあるカードです。
よく《ダーク・グレファー》でこのカードを捨ててしまうプレイヤーがいますが、実はこれ凄く損をしています。
元々《BF−暁のシロッコ》と《BF−アームズ・ウィング》では攻撃力に300しか差がありませんし、リリース無しで繰り出せる2000打点というのは実にハイスペック!

その能力も含めてコンセプトである「戦闘破壊」に非常に良く適しており、非の打ち所がありません。
《BF−暁のシロッコ》は立派な脅威の一つですからコストとして消費してしまうのは大変惜しく、《ダーク・グレファー》とセットで揃っていたとしても単体で使っていく方が好ましいです。
《BF−暁のシロッコ》を無理なく3枚搭載できるこのデッキにとって、BFモンスターがフィールド上に並びやすい今の旋風環境は若干の追い風とも取れます。
効果を使えば《BF−月影のカルート》を気にする必要がなくなりますから、戦闘破壊を達成する上では《BF−アームズ・ウィング》より頼りになる事がほとんどです。
それ以外のところでは《BF−疾風のゲイル》と《カードガンナー》も戦闘破壊能力に長けていますね。
《BF−疾風のゲイル》は効果により攻撃力2500以下までのモンスターを一方的に破壊できますし、《奈落の落とし穴》をくぐり抜けるため成功率も高く安心が置けます。
唯一殴り返しに弱いという欠点がありますが、鳥獣族である事を活かした《ゴッドバードアタック》がその後のケアにも幅を利かせてくれます。
加えて墓地に《ネクロ・ガードナー》があれば更なる戦闘破壊を見て行く事ができます。
《カードガンナー》は破壊できる範囲こそ狭まりますが、こちらは墓地肥やしのボーナスがあり、さらに戦闘に際して《オネスト》や《BF−月影のカルート》を使われてもライフこそ失いますが損がありません。
《BF−蒼炎のシュラ》に叩きに行ってもある程度ケアが利くのも利点の一つです。
こちらも《ネクロ・ガードナー》との相性が良く、チャンスがあれば狙って行きたいコンボです。《カードガンナー》自身の効果で《ネクロ・ガードナー》が墓地に落ちるような事があればそれはもはや宇宙!!
また《ネクロ・ガードナー》は《BF−暁のシロッコ》を相手のそれから守る役割もあるので、覚えておいて損は無いでしょう。


戦闘破壊によるアドバンテージ獲得の方法は以上です。デッキの構成が単調なので取れる選択にもそこまで幅がありません。
次はこの項の冒頭で少し触れたカードを使ってのアドバンテージ獲得手段に関して記したいと思います。


さて、カードを使用したアドバンテージ獲得の手段という事ですが、わかりやすいもので言えば既に文中にあった《聖なるバリア−ミラーフォース−》何かがそれを可能にしうるカードだと言えます。
基本は1体複数の交換が可能なカードがアドバンテージを生みだす要因になります。
逆に《次元幽閉》のような1:1を基本としたデザインのカードはその達成が困難です。
実際に有利な交換を取りに行く事を考えると以前記事で紹介したゴッドバードアタック》を使う方法が最も無難かつ効率的です。
リンク先の記事にも解説がありますが、一応ここでも軽くまとめておこうと思います。



自分から何かしらのアクションを起こす際、先立って《ゴッドバードアタック》を場に伏せておけば相手の《奈落の落とし穴》や《次元幽閉》のような除去を消費させつつ、除外処理を避ける事ができます。
さらに相手フィールドに発動された除去カード以外の何かしらのカードが2枚以上あれば、それらを対象に取る事で2:3の有利交換をも達成させる事ができるのです。
相手の伏せがブラフでそのまま攻撃が通れば「戦闘破壊」による純粋なアドバンテージを獲得できますし、仮に何らかの迎撃手段があった場合でも《ゴッドバードアタック》に逃げれば良いため強気なプレイを取りやすく、積極的な戦闘破壊の機会を生むためプラスの方向に向かいやすいのが利点として挙げられます。
《スターライト・ロード》という裏目もありますが、《我が身を盾に》《神の宣告》《盗賊の七つ道具》のようなその他大勢に対しては2:2までの消費に抑えられますし、とても理に適った動きです。
「損をしにくい動き」という事で墓地BFの基本理念にもしっかり沿っていますし、デッキに3枚積めるカードですから戦術の軸として大変有効に活用していけます。


他に複数交換によるアドバンテージ獲得の見込みがあるのは
《ダーク・アームド・ドラゴン》
《サイクロン》
《異次元からの埋葬》
《神の宣告》
聖なるバリア−ミラーフォース−
《魔のデッキ破壊ウイルス》
《異次元からの帰還》
あたりでしょうか。

《サイクロン》は相手がこのカードを破壊しようとしてきた際にチェーンで発動する場合にアドバンテージが発生します。わかりやすい1:2です。
ただ構えているだけだとなかなかこの状況は発生しづらいのですが、上に挙げた《ゴッドバードアタック》のパターンと併用してセットしておくと狙える確率がグッと上がります。
この《ゴッドバードアタック》単騎のセットは現時点では既にメジャーな戦術で、相手も場に3枚以上のカードを置かないように努めてくる事が多いためアドバンテージを得る事は難しくなっていますが、《サイクロン》を併用して複数枚の伏せ、強固な守りを演出していく事で相手のカードを誘い出す事が可能になり、そこで3:4交換を狙って行けるようになる訳です。
カードを使ったアドバンテージの獲得には何かしらのテクニックを挟まなければならない事が多くあり、プレイヤーの腕が大きく反映されます。
発動タイミング、そこに至るまでのプロセス等々、場の状況に冷静な判断を下し、逐一の最善を見極めていく必要がありますから、ここにはひたすらの「練習」が必要です。
ことカードゲームに関しては大概の努力は実ります。プレイングなんてのはまさにそれで、やればやるだけ確実に力は備わって行きます。百戦錬磨を目指しましょう!




そしてこの項の最後に、墓地BFのプレイで非常に重要な部分である《終末の騎士》の扱いについて触れておきたいと思います。

最初に述べたようにこのカードはどんどん場に出していくようなカードではありませんし、ステータスだけ見れば頼り無い事この上なく、《ダーク・グレファー》のように速攻で《BF−アームズ・ウィング》を繰り出す事さえままなりません。
では一体何が強みなのかと問われれば、それはズバリ「追撃」。このカードの最も強いタイミングは「第二波」としての運用です。
《ダーク・グレファー》は手札に《BF−暁のシロッコ》か《BF−大旆のヴァーユ》のどちらかを揃えれば即座に2300打点をフィールドに送り出す事が出来ますが、《終末の騎士》が効果で墓地に送ることのできるカードは1枚であるため、単体ではそれが行えません。
行えませんが、既に墓地に片割れが置かれていたのであれば話は別です。
先に《BF−暁のシロッコ》か《BF−アームズ・ウィング》での攻めを展開し、そのカードが倒されるか《ゴッドバードアタック》のようなカードのコストになるかさえすれば、それらは墓地に送られますから、その後の「追撃要因」としてこの《終末の騎士》を加えれば即座に次なる攻撃に移れます。
また《終末の騎士》は《おろかな埋葬》と違い「生きている」ため相手ライフを削る打点にもなりますし、《BF−大旆のヴァーユ》を落としながら効果を起動して特殊召喚を行えばアドバンテージはプラスされます。
少しわかりにくいかもしれませんが、例えばお互いのリソースは共に尽き果て、互いに手札と場のカードは0枚の状態、墓地には幾らかのカードがあるとします。
ここでこちらが《終末の騎士》を引き当て、これにより《BF−大旆のヴァーユ》を墓地に送り込んでBFシンクロを展開すればフィールドには2体のモンスターが並び、目に見えた形でアドバンテージを得た事になります。
ステータスの低さや効果の地味さが先行して実感しづらい事なのですが、《終末の騎士》は実に有用なアドバンテージモンスターです。

更に《BF−大旆のヴァーユ》で召喚可能なBFシンクロはレベル6,7,8の3段階用意されていますから、一度レベル5以上のBFモンスターを墓地に送る事が出来れば、後続の《終末の騎士》は自身と合わせて4000近い打点を供給し続けるハイスペックモンスターに成り変わります。
《BF−大旆のヴァーユ》をコストとした《ゴッドバードアタック》による2:2交換が、この《終末の騎士》でアドバンテージの発生に結び付く訳です。
状況次第では《ゾンビキャリア》によるシンクロ召喚に狙いを移せますし、実に素晴らしいカードですね。
このカードの扱い方を見ればどのくらいこのデッキを使い込んでいるのかが一目瞭然でわかります。
また《ダーク・グレファー》と違い手札コストを必要としないのも大きな利点で、《ダーク・グレファー》は手札にコストとして使える闇属性モンスターを持たなければほとんど使い道のないバニラモンスターになりますが、《終末の騎士》は常に安定した選択肢を保証してくれます。


さて、長々とアドバンテージの獲得手段について記しましたが、もちろんのことながらアドバンテージを得るだけではゲームに勝つ事はできません。
次の項目ではゲームに勝つための道筋、ゲームメイクについてお話します。

3.ゲームメイク

ゲームメイクというのはある程度試合運びを予測し、それに沿ったゲームの組み立てを行う事で、俗に言う「プレイングが良い」というのは、この事の上手さを表わしているのだと僕個人は解釈しています。
では、墓地BFではこれをどう行うのか。

始めに一つの大前提として知っておいて欲しいのは「攻め手の資源は有限である」という事です。
ここで言う攻め手というのは《BF−大旆のヴァーユ》を介したBFシンクロの事で、このデッキは攻撃手段をこれに依存し過ぎているため、あとどのくらいの攻め手が残されているのかを常に把握しながらゲーム展開を組み立てていく必要性があります。
同名カードはデッキに3枚までしか投入できませんから、《BF−大旆のヴァーユ》の効果の使用を宣言できるのは原則3回までとなります。
《異次元からの埋葬》や《異次元からの帰還》を絡めて墓地に置き直す事で何度か使い回しは利きますが、双方共に制限カードであり、《封印の黄金櫃》のようなサーチカードを使用する事で計画的な利用を考えたりしていない限り、4回以上の使用を考えていくのは無理があるでしょう。
基本はこの「3回」を目途にリミットを定め、対戦相手を倒しきる必要があります。
以上を踏まえた上でこの先の話を進めていきます。


まずこれまでに再三お話してきましたが、このデッキの最大のテーマは「アドバンテージの保持・獲得」です。
前項の最後に「アドバンテージを取るだけではゲームに勝つ事は叶わない」事を述べましたが、それは「最終的には」ライフを取りに行く必要性があると言うだけの話で、そこに至る第一歩はやはり「アドバンテージ獲得」なのです。
それでは、ゲームの進行を序盤・中盤・終盤に分け、各段階で取るべき行動の指針について触れていこうと思います。


「序盤戦」
ゲーム序盤は我慢の時です。
相手が動き出すまでこちらから動き出す必要はありません。
自分からモンスターを先出しする事は特にタブーとされている事で、例えば《ダーク・グレファー》を先に召喚していった場合、相手はそれを確認した上で《BF−暁のシロッコ》や《BF−蒼炎のシュラ》のような1段階大きなモンスターで迎え撃つ事が予測されます。
それに際して貴重な除去を消費したり、そのまま戦闘破壊をされてしまうような事があっては絶対になりませんから、いくら相手のフィールドが手薄で、手札に《サイクロン》を含む確実に打点を通す方法があったとしても抑えを利かせておくべきです。
膠着状態が続く事は墓地BFにとって非常に望ましい事です。
わざわざこちら側から消耗戦に持ち込む必要はありません。
これまでで述べてきたように、墓地BFは幾つかのカードの組み合わせによって最大の効力を発揮するデッキですから、ドローをより多く得る機会があるのであれば甘んじてその状況を受け入れましょう。
十分にカードが揃わないうちに勝負をけし掛けて消耗戦に持ち込むと、大概の場合苦しい状態になってしまいます。
特に旋風BFのようなデッキに対してそれを行うと《BF−極北のブリザード》のような強力な返し手の多い相手にはどうしても遅れを取ってしまいがちなので、消耗戦に進む事はなるべく避けるように心掛けると良いでしょう。


また、膠着せず、相手が積極的な攻めを試みてくる際は、《奈落の落とし穴》のような除去カード群と1項で述べた「ライフ支出」を行う事で可能な範囲でのカード獲得を目指します。
ゴッドバードアタック》でバックアップした《BF−暁のシロッコ》や、損失の無い《カードガンナー》以外でのモンスターによる返しは自重するのが吉です。
特に《ダーク・グレファー》の使用は手札消費が激しく相手に付け入る隙を与えやすい上に、手札枚数の減少は後続の返し手の存在を否定し、相手に与えるプレッシャーが薄れてしまうため一層好ましくありません。
序盤はひたすら「耐え凌ぐ」イメージで戦いましょう。
実際僕が墓地BFを大会に使用した際のライフ用紙は、ほとんどのゲームがライフが2000前後まで落ち込んでいます。
僕は現時点ではこれを理想の状態と結論付けていて、そうなった上で勝利を収めた試合はベストなゲームだったと考えるようにしています。


「中盤戦」
中盤戦の定義は「1、膠着状態からどちらかのプレイヤーが手札の溢れ(7枚以上)を嫌いモンスターによる攻めを行ってきた時」または「2、ライフ支出により幾らかのカードを得たが、残りライフ的にこれ以上ダメージを受ける訳にはいかず、動き出す必要がある時」です。経過ターン数は関係ありません。
例えばの話、相手が1ターン目に《BF−蒼炎のシュラ》と《BF−黒槍のブラスト》を一気に展開し、3500ものダメージを与え短期決戦を臨んでくれば、「序盤戦」なんてものは一瞬で終了です。この段階に移行します。
この辺りから手札の内容、戦況を整理して明確な勝ち筋をイメージしていく必要があります。
相手の攻めを駆逐し、かつライフを削り切る方法を考える訳ですが、この時最も効率的なのは《BF−暁のシロッコ》です。
高い打点で軒並みの相手の下級を上回れますし、鳥獣族ゆえに《ゴッドバードアタック》に対応、1枚ぐらいの《BF−月影のカルート》には押し負けず、例え墓地に送られても後続の《終末の騎士》から《BF−アームズ・ウィング》を召喚可能と何かにつけて万能です。
ただし無いならないで仕方がないので、持ち合わせる中でのベストな方法を考えていく事になります。
中盤戦は相手の脅威を払いのけつつ、自分の勝ちパターンに持ち込む非常に重要なステップです。
前項で触れたように《BF−暁のシロッコ》か《BF−大旆のヴァーユ》を《ゴッドバードアタック》で飛ばしつつ《終末の騎士》で片割れを揃えて墓地シンクロを行えば簡単にアドバンテージは発生しますから、アドバンテージを生みだす機会は割とふんだんに用意されています。
《BF−暁のシロッコ》に《奈落の落とし穴》を発動させ《ゴッドバードアタック》で他の2枚のカードを破壊し、《終末の騎士》を続ければこの時点で相手との間に2枚分の差が生まれます。
さて、これに際して幾つか注意点があり、まず「《ゴッドバードアタック》は追い込まれる前に伏せておく事」です。
フリーチェーンゆえにセットから1ターンが経過すればいつでも発動が可能ですし、相手の除去にチェーンして逃げる形を取ったりするためにも事前のセットが必要です。
追い込まれてから鳥獣+セットカードなんていう見え見えの防御手段を敷けばエンドフェイズの《サイクロン》や《ゴッドバードアタック》、《デュアルスパーク》のようなカードに詰まされてしまいますから、そうなるよりも早く場に置いておく事が望まれます。
《奈落の落とし穴》や《次元幽閉》のようなカードは発動タイミングが限られているため、エンドフェイズの《サイクロン》のような破壊カードに影響を受けにくいため、残りのライフと相談しながらセットの順番を良く考慮しましょう。

注意点その2は《ゾンビキャリア》による返しです。
墓地BFの《ゾンビキャリア》を使用した返しは「最悪」です。この方法は極力避け、他の最善を探って行ください。
墓地BFに限った話では無いかもしれませんが、《ゾンビキャリア》の効果が非常に厳しい制約を必要としているためです。
まず第1に手札のカードをデッキの1番上に載せる効果。
手札1枚を消費する事で場に特殊召喚を行うためアドバンテージ的に見ればプラスマイナス0ですが、デッキのトップを固定してしまうのが大きな問題です。
仮にこの効果を使った返しの相手のターンに新たな脅威を展開され、かつ現状の手札に解答が存在しなかった場合、トップに載せたカードがドローにストップをかけているため、2ターンもの間脅威を処理できない事が確定していまいます。
また、こと墓地BFに関して言えばトップの1枚で状況を打開できるカードは非常に少なく、「詰み」を発生させる一つの要因になります。
第2にゲームから除外されてしまう点。
ゲームから除外されたカードは特定のカード効果を利用しない限り再利用を図れません。
墓地BFには《異次元からの埋葬》と《異次元からの帰還》の2つのオプションがありますが、どちらも制限カードゆえに期待値は低めです。
その事もあってゲーム中墓地から《ゾンビキャリア》を利用できるのは原則「1回きり」です。

この「1回」をゲーム中のどこに持ってくるかは非常に重要な選択であり、制限カードの力を借りない限り後戻りができないため失敗が許されません。
《ゾンビキャリア》が持ち合わせる2つのデメリットは双方共に致命的であるため、これによる返しはまさに最後の手段、奥の手として温存しておくべきです。
ただし、第1のデッキトップの固定に関しては《終末の騎士》《ダーク・グレファー》《増援》のようなデッキをシャッフルする効果、もしくは《カードガンナー》のデッキの上からカードを墓地に落とす効果で解消する事が出来ます。
またレアなケースではありますが、《ゾンビキャリア》でトップに置いた《BF−大旆のヴァーユ》のようなカードを《カードガンナー》で墓地に送るコンボもありますから、覚えておいて損はありません。
何にせよトップの固定はかなりリスクの高い行動ですから、軽い気持ちで効果発動を宣言しないようにしましょう。


ゲームの要所は間違いなくこの中盤戦です。しっかりと考え抜いてベストな選択を行いましょう。
また《ブラック・ホール》はこの段階における最強の返し手です。扱いが難しいとされるこのカードですが、墓地BFほどこのカードを効率よくプレイできるデッキはなかなか無いように思います。


「終盤戦」
終盤戦ではこれまでに出来たカードアドバンテージの優位を活かし、極力損の少ない方法を選びながら、確実な詰めを意識して行きます。
冥府の使者ゴーズ》や《ブラック・ホール》に得たアドバンテージを失わないように慎重な攻め手を選び、じわじわとライフを奪っていきます。
無理は禁物で、特に《冥府の使者ゴーズ》は2700以上の打点を確保するのが困難なこのデッキでは致命傷にもなり得ます。
十分な優位を確立できている状況であれば決して無理をせずに的確なケアを行いながら攻撃を加えていきます。



また、上記は自分が勝つ流れにある終盤ですが、当然ボードの状態が著しく悪い負けの流れの場面もあるでしょう。
墓地BFは窮地からの巻き返しがとても難しく、正直そうなってしまうとかなり絶望的です。それゆえに「ライフ支出によるカード獲得」や「アドバンテージの優位」が必要なのです。
ただ安易にゲームを捨ててしまうのは情けないので、一発逆転のプランを模索します。
大抵は膨大なアドバンテージ差を覆す事のできる《ダーク・アームド・ドラゴン》か《ブラック・ローズ・ドラゴン》の2択ですね。
《ダーク・アームド・ドラゴン》の方は手札にあれば簡単な話ですが、追い込まれているという事はそのような状態には無いと思いますから、トップに期待し墓地の管理を的確に進めておく必要があります。
《ネクロ・ガードナー》や《ゾンビキャリア》による数の上下を利用し、訪れた幸運を無駄にしないように。
《ブラック・ローズ・ドラゴン》はチューナーの少ないこのデッキではとても狙いにくく、制限カードである《BF−疾風のゲイル》《ゾンビキャリア》《死者蘇生》のいずれかが絡まない限り実現しません。
しかしながら、決まればまさに一発逆転の可能性を秘めていますし、僕は実際にこの方法で何度か負け試合を拾った事がありますから、苦しい状況になった際は狙った動きをイメージしてみるのも手です。




以上、ゲーム全体の流れを3分割して解説してみました。


また墓地BFにはあまり知られていない必殺の動きが一つあって、《ダーク・アームド・ドラゴン》や《異次元からの埋葬》《異次元からの帰還》のような超展開カードの力を借りずともワンターンキルを行える組み合わせがあります。

手札に《BF−暁のシロッコ》《BF−大旆のヴァーユ》(もしくは《ゾンビキャリア》)《終末の騎士》《ダーク・グレファー》、それにコスト用のカードが1枚か2枚あれば一気に相手ライフを8000削ぎ落す事が出来ます。

    1. 《BF−暁のシロッコ》をディスカードして《ダーク・グレファー》を特殊召喚し、《BF−大旆のヴァーユ》もしくは《ゾンビキャリア》のうち無い方を墓地に送ります。
    2. 《ゾンビキャリア》を自身の効果で釣り上げます。
    3. 墓地シンクロを行い《BF−アームズ・ウィング》を特殊召喚
    4. 《ゾンビキャリア》と《BF−アームズ・ウィング》でシンクロ召喚を行い、《スクラップ・ドラゴン》を特殊召喚
    5. 《終末の騎士》から《BF−大旆のヴァーユ》を墓地に送る。
    6. 先ほどのシンクロ召喚で墓地に落ちた《BF−アームズ・ウィング》と墓地シンクロを行って《BF−アーマード・ウィング》。
    7. 最後に《スクラップ・ドラゴン》で相手フィールドのモンスターを不要な魔法罠1枚と交換してアタック!

これで8400のダメージで勝利する事が出来ます。
墓地に何も無い状態で、全て3枚投入しているカード4枚を1枚ずつ揃えればできる流れであるために割と良く起きますし、どれかが欠けていてもゲームを進める中で近い状況が作れればライフを一瞬で奪う事が出来るため奇襲性が高いです。
もちろん先に挙げた超展開カード群を併用すればさらに強力な流れを築く事が出来ますから、バリエーションは割と豊富です。
全てを持っていなくともある程度のダメージを弾き出せるため、墓地BFを使う上では絶対に覚えておきたいパターンです。

《スクラップ・ドラゴン》の部分は相手のフィールドが空なら《インフェルニティ・デス・ドラゴン》でも構わないので《冥府の使者ゴーズ》もケアできますよ。
ちなみにセットから1ターンが経過している《ゴッドバードアタック》があれば《冥府の使者ゴーズ》があっても詰みです。
また、この手順の中には先の説明の中にある《ゾンビキャリア》を使う上での注意点、「トップの固定」を《終末の騎士》を後に召喚する事でケアする動きを取り入れています。
早い段階で墓地リソースの使用を宣言する事で《D.D.クロウ》を誘っている役割もあり、この一連の流れはどこに《D.D.クロウ》を食らっても止まってしまうため、先にこの有無を確かめようと言う意図があります。
コンボが止まってしまうなら《終末の騎士》は手札に温存しておきたいため、この召喚は最後に回しています。
仮にデッキトップに載せる予定のカードが《異次元からの埋葬》のような強力なカードだった場合は《ゾンビキャリア》蘇生の手順を後に回すと良いでしょう。





以上です!
なるだけ要点のみを記すようにしていたのですが、ついつい要らぬ補足を交えてあれこれ書いている内に1万字を越える長文になってしまいました…
最後まで読んでいただいた方には感謝の極みです。そしてお疲れ様でした。
最初に少し触れたように、墓地BFは「一つミスをすれば終わるデッキ」とされていて、とても難しいデッキです。
ゲーム中幾度となく重要な選択を迫られ、大きな裏目も存在します。
実際僕も勝てたゲームを何度かプレイミスで落としており、その度に死にたくなるぐらいの後悔を重ねていますが、自分の目論見が上手くハマり、ゲームに勝利した時は最高に気持ちいいですね!
プレイの上達を感じやすいのも魅力の一つと言えます。
この旋風一色環境にBFを違う形で運用していくのはちょっとかっこいいはずですよ!多分きっと。


そんな訳で今回はここまでです。
読んでいてわかったと思うのですがこの記事はメインデッキでの戦い方しか記していません。
当然メタの介入する2本目以降は戦い方が大きくシフトします。全く別の戦いと言っても過言ではありません。
以前からコメントでもサイドチェンジの質問が幾つかありましたから、次回はこれにお応えする形で変更の仕方及び戦い方、その意図をご紹介したいと思います。


それではまた次回〜♪