ISDCS考察

先日の愛知CSの考察と合わせて。
まず大きな違いは個人戦とチーム戦であること。
個人戦って言うのはもちろん個人の力で戦い抜くもので、自分一人の成績がそのまま反映されます。
愛知CSの予選ラウンドはIDなしの全5回戦のスイスドロー形式でしたから、予選通過のボーダーは5−0ないし4−1のオポネント。
そこから全4回戦の決勝トーナメントにコマを進めれば最低7−2の最高9−0。
一方チーム戦の方は問われるのがチームの総合力で、極端な話3人中2人が8−0でかつ1人が0−8、もしくは全員が5−3でも理論上は優勝可能です。


つまり、上位入賞したチームの全てのデッキが強いかどうかは怪しいということ。
結果サイトでは個人の成績までは発表されないのでその辺が非常に曖昧です。
またその成績が公開されていたとしても、対戦卓はABCで固定されていて、チーム内でも当たり外れがあるのも事実なのでどこまで信頼を寄せていいのかは結構迷うところなんですよね。


以上の前提を踏まえた上で、上位に残ったデッキの考察を進めたいと思います。
まず上位4チーム全12デッキは…

旋風BF 5人
クイックダンディ 2人
ライトロード 2人
植物ライロ 1人
儀式天使 1人
墓地BF 1人

という内訳。
ここで出てきたデッキが、レシピが公開された事もあって今後の環境のメタになる可能性が強いので一つ一つ書いていこうと思います。

旋風BF

ここにきてテンプレが確立。
まず採用されるモンスターはダムドにヴァーユ・ゲイルを除くBF5種がそれぞれ3枚の18枚が基本構成。
上位5人中1人だけ《魂を削る死霊》の採用が見られ、その上実際の決勝戦でも活躍している(参考:http://www.youtube.com/watch?v=fmRsLN4I82E)ので今後のトーナメントシーンでも採用される可能性がある。
魔法も今までのテンプレに強欲謙虚が数枚加えられたものが多くみられ、愛知CSの上位にも見られたように今後はこのスタイルが主流になると考えられる。
要は特殊召喚を挟むタイミングが1ターン遅れる訳で、そうなってくるとより一層先行後攻の重要性が高くなる。先行の第1ターン目は特殊召喚を行う必要性がほとんどなく、気兼ねなく強欲謙虚を発動できるので利点は大きい。
こうした状態になってくると、2位の2名が採用しているメインからの《ハリケーン》も大きな意味を持ってくる。ハリケーンの強さについては昨日の記事で。
罠は《神の警告》を使うか使わないかでタイプが大きく分かれる。
警告の欠点は言わずもがなのライフコストで、ライフを奪いやすい先行ではペース掌握の問題も含めて非常に評価できる1枚。
逆に後手後手になりやすい後攻では若干浮きがちな1枚で、扱いに難が出る。
また今回僕が使った墓地BFのようなデッキを相手にするとカウンター不可能な墓地シンクロからのアームズウィングが問題となり、そのまま発動機会を得られずライフを失う結果になりかねない。
僕が見てきた試合の中でもライフを支払いきれずに警告が発動不可能になっているシーンも多くあり、ここはテンプレとして確立させるにはまだ早いように見えました。

クイックダンディ

海外産のこのデッキもここにきていよいよメタに台頭。
このISDでも8−0の好成績をマークしての優勝を遂げいているので今後もシェアリングを拡大して行くことが予想できます。
似たようなデッキに「デブリダンディ」がありますが、《クイック・シンクロン》を用いたこのタイプの強みは何といっても《ドリル・ウォリアー》。
《ダンディ・ライオン》を回収しながら毎ターン繰り出されるトークンを壁にしたダイレクトアタックは充分な脅威で、解答を持たないデッキはこれだけで負けてしまう事もよくあります。
またトークンの処理を怠れば《デブリ・ドラゴン》からのトリシューラやスクラップドラゴンが詰めにかかりますし、
ブラックローズならトークンを必要としないままフィールドをリセットできます。
またその際ドリルは場を離れることができるので無駄がなく、自分だけは一方的に立て直しを図れるため、明確な対処方法を熟知しておかないと闇雲にカードを並べているだけではアドバンテージに差が出てきてしまうので注意が必要です。


以上の事からも、このデッキはいわゆる「わからん殺し」の面が強く、中途半端な動きを繰り返していると手に負えなくなります。
しかしながら当然その動きの中にも弱点はある訳で、それが「墓地」です。
今の遊戯王は何かしらのリソースを用いてアドバンテージを獲得して行くのが主流で、ここ最近はその狙いを墓地に定めている事が多くなってきています。
このクイックダンディも同様で、「墓地」を動きの起点としており、
ドリルの回収は勿論デブリドラゴンを始めとする反し手や貪欲な壺のようなゲームに強い影響を及ぼすカードも一通り墓地を絡めています。
ゆえに《D.D.クロウ》のような基本的なメタから《霊滅術師カイクウ》《転生の予言》、ちょっと変わったところで行けば《魂の解放》や《大火葬》なんかも程よく刺さります。
また究極の解答として《魔のデッキ破壊ウイルス》があります。
今回のISDCSで優勝したタイプのモンスター構成を引用すると

モンスター(23枚)
冥府の使者ゴーズ
ローンファイア・ブロッサム×2枚
ライトロード・ハンター ライコウ×3枚
デブリ・ドラゴン×3枚
ダンディライオン×2枚
スポーア
スノーマンイーター×2枚
グローアップ・バルブ
クリッター
クイック・シンクロン×3枚
カードガンナー
ヴォルカニック・バレット×3

となっており、ゴーズ以外の全てのモンスターが破壊される構築になっています。
打点の低さはデッキのコンセプト上仕方のないものなので、これに対しては《王宮のお触れ》《トラップ・スタン》《盗賊の七つ道具》のような「メタのメタ」を当てる他なく、
「メタのメタ」は相手がそのように動いてこなかった場合非常に腐りやすいという大きな欠点も持ち合わせているので、この問題点の解消は容易ではありません。
今後のトーナメントシーンで生き残っていけるかはこのあたりが重要になってきそうです。

ライトロード

毎度環境の頭になってくると「今ならやれるのでは」と返り咲くライトロード。
軒並みパワーカードが取り払われた今の環境は《裁きの龍》のスペックの高さを際立たせています。
ただ相も変わらず所詮は「この一点」であり、「ほぼバニラ」のモンスター群を多く採用しなければならない点がいつまでも足を引っ張っている状態が続いています。
カオスソーサラーの緩和もネクロガードナーが規制された今の環境下では闇を取りそろえる事が難しくなっており、事故と隣り合わせの爆発力の色合いを増した印象。
実際回り切る前に旋風BFの力に押し切られるシチュエーションも多く、光の援軍規制以降はただただ弱体化の一途を辿っています。

植物ライロ

裁きの龍に頼るのをやめ、ライトロードの墓地肥しを有効に活用しながら展開を狙うデッキは《光の援軍》の登場以降よく見られる光景になりましたが、
この植物ライロもその一環で、通常のライトロードに加えてよくある「植物エンジン」を組みこんだのがこれに当たります。

デブリ・ドラゴン×3枚
ダンディライオン×2枚
スポーア
グローアップ・バルブ
おろかな埋葬

今回入賞したのは上記5種8枚を投入したタイプのもので、《ローンファイア・ブロッサム》を使用せずにライトロード効果で墓地に落ちるのを期待しながら、デブリドラゴンを有効活用して行く狙いに置かれたものでした。
ライトロードは上手い具合にレベルが散っているので意外とシンクロに使いやすく、トリシューラもどんどん投げていける作りになっているので割かし上手く動いてくれます。
ただいかんせん援軍の規制以降のライトロードは肝心要の「墓地肥し」が遅く、相手に先に回られるといいとこ無しで袋叩きに合いやすく、ネクガの規制も相まってライフが持たない状況もよく見られます(参考:http://www.youtube.com/watch?v=hyIBhHZe5OM)。
結局この点を解消する何かを見出さない限りトップを見るのは難しそうです。

儀式天使

旋風BFに続く前環境の生き残り組。
今大会で使用された形も以前から使われていたものからほとんど変化がなく、唯一変化があったのはその勝利手段をTODに特化させたところか。
1本目からパーデク・クリスティアのロックを成立させ、相手を生き殺しにした上でのタイムオーバーデスを目的としています。
ただ最近この手のデッキが減ってきたせいもあるのか、切り抜ける手段を知らないプレイヤーも多くいたようで、あっさりとロックを決められてしまう場面が多々見られました。
パーデク・クリスティアの状況から抜け出すのは容易ではなく、相手の妨害が挟まらない事は無いに等しいのでこの状態から真っ先に考える事は「いかに早く負けるか」。
最速はパーデクかクリスティアに対する自爆特攻で、デッキの性質上攻撃を阻害する魔法罠は数が積めないので何回か繰り返せば幾つかは通るはずです。
特にクイックダンディのようなデッキは攻撃力の低いモンスターが山ほどいるのでサクサク殴ってモリモリライフを減らすことが可能です。早ければ4ターンぐらいで負ける事が出来るので、サイドデッキにも手をかけやすい。
ただし、闇属性モンスターを軸としているデッキの場合は《聖なるあかり》の存在があり、《コーリング・ノヴァ》からの自爆特攻で特殊召喚を図られるケースもあるので「貯め込み」が前提となってきます。
特に旋風BFのようなデッキの場合はフリーチェーンカードも多いので手札7枚+伏せれるだけのモンスター+伏せ5枚を最大限に揃え、一斉に仕掛けます。
自爆しきれるならそれはそれでかまわないし、相手がそれを嫌って伏せを使ったり手札の天使を切り始める事があればそれに乗じて仕掛けを行えば競り勝つ事も不可能ではありません。
ただしそこまで準備を進めるのは非常に手間がかかる上、考えていてエキストラに入ってしまうと相手の思うつぼなので、儀式天使とのマッチングを事前に想定した上で突破の仕方を考慮しておく必要があります。
大事なのは「相手は殺しに来ない」という事。ライフが削り切られる事は無いので準備する時間は十分にあるはずです。
焦って不毛な発動を繰り返すと裁き切られた上に《闇の量産工場》で詰まされてしまうのでしっかり腰を据えて冷静に戦う集中力も必要です。


デッキ的には書くことがほとんどないので対抗策を中心に書きました〃笑
以上の事を踏まえると天使側も以前あったような《異次元の境界線》や《光の護封壁》を採用したタイプのものにシフトして行くかも知れません。
ただ「サレンダー可能」の特殊ルールを採用しているCSも増えてきていて、この手のTODが成立する事はルール的に難しい場合がありますので今後見られるかは怪しいところです。

墓地BF

最後に、僕の使った墓地BFに関して。
と言ってもデッキ的な解説は先日の記事で書いてしまいましたのでほとんど書くことがありません。(コチラ
ここでは環境での今後の立ち位置について書こうと思います。


まず、プレイングが特殊で、好んで使うプレイヤーが少ない少数派のデッキであることから、過剰なメタを積まれづらいのが一つのメリットとして挙げられます。
よく旋風BFを差し置いてまで使う理由はあるのかという質問を受けますが、そういった質問が生まれるぐらいデッキの在り方や認識を間違っている方も多いぐらいなので、地雷的なポジションでしばらくはやっていけるんじゃないかと思っています。
幾つかワンキルパターンがある事も、多分知らない人は多いんじゃないかと思います。
もちろんダムドや異次元埋葬・帰還を使えば楽にそれが達成できますが、なくても十分に可能です。



入賞デッキの考察は以上です!