デッキ解説 - 聖刻

浜松・関東共に聖刻を使用しました。
2日間の間で微妙に構築・テーマが違うので、3回ぐらいに分けて書きます。
今回は聖刻というデッキの基本的な動かし方について。

性質

聖刻龍−アセトドラゴン
聖刻龍−ネフテドラゴン
聖刻龍−トフェニドラゴン
聖刻龍−シユウドラゴン


上記4体はリリースされた際にバニラドラゴンを生み落とす効果があります。


聖刻龍−ドラゴンゲイブ
聖刻龍−ドラゴンヌート


の2枚も同様にバニラドラゴンのリクルート効果を持っていますが、出てくるモンスター・条件が弱めに設定されており、いずれも展開の手段が相手依存となってしまうため勝手の悪さが目立ちます。
ドラゴンゲイヴは能動的なリリースでも聖刻バニラを生み出せますが、レベル8のエクシーズが現状構築レベルとは呼べない代物ばかりなので考えるに値しません。
基本は先4種から導かれるレベル6バニラを素材とした聖刻龍王−アトゥムスを用いて、連続的な展開を意識する事になるでしょう。


まずそれら4種の聖刻モンスターですが、気持ち程度の能力こそあれど単体で見ればどれも実戦レベルのカードではありません。
加えて召喚されるバニラの攻守は0。デザイン通りエクシーズを前提とした戦い方をする他無いと言えます。
今回リリースされたGAOVには豊富にランク5・6モンスターが取り揃えられており、過去のセットと合わせればかなりの選択肢が現存しています。

No.61 ヴォルカザウルス
バーン効果の代償としてダイレクトアタックが不可となるネックも、今回登場したガイアドラグーンにより帳消しとなりました。ダメージ効率はピカイチです。
ただし聖刻におけるランク5モンスターの召喚は非効率的な場合が多く、同ランクに応用の利きやすいプレアデスがいる手前出番は少なめです。


No.12 機甲忍者クリムゾン・シャドー
破壊耐性持ちの屈強なランク5モンスター。
グルフを手にしたインゼクターはしょっちゅうこれを召喚してきますが、それはセンチによって獲得した追加の攻め手あってこそ。
聖刻におけるクリムゾンシャドーは純粋な2枚消費からしか召喚できず、ただの破壊耐性持ちではいささか心もとないです。
ランク5は通常プレアデスの召喚が可能となるため、その他のランク5は余程その能力が必要とされている場面でしか需要がありません。


始祖の守護者ティラス
クリムゾンシャドー同様です。
相手の激流葬や奈落の落とし穴を回避できると言う役割はありますが、伏せのある状態でレベル5モンスターを複数展開していくと言うのがかなりのレアケースである上、相手もこれらの登場をケアして事前に除去を当てると言う選択肢がありますから、それさえ相手依存。
やはり必要な場面は限定的になりがちです。


セイクリッド・プレアデス
場のこじ開け、アトゥムスで呼び出したレダメの回収、トレミスへのジャンプアップで打点確保、先行展開で相手の脅威への予防策と何でもござれ。
前述したように聖刻のランク5は呼び出すのがなかなか手間で非効率的な場合が多いのですが、これに限り固有のワンキルパターンを保持しているため登場機会は多めです。


セイクリッド・トレミスM7
バウンスではあるものの、相手の場からカードを消せる能力がエクシーズで達成できる点が重宝します。ワンターンキルに向かう際、邪魔な脅威を排除する際もこれに頼ることは少なくありません。
相手の場のカードに触れるランク6は現状これとエクサビートルのみです。
また、墓地からカードを拾う効果も大変有用で、聖刻モンスターを拾い直して第二陣を築いたり、インゼクター相手にヴェーラー+回収効果のハメパターンを作り出すことも可能。
ブラホや月に対してもケアが利く分バウンサーやフォーカスフォースよりこちらの方が有効なケースもあります。
さらに聖刻デッキにおいてはプレアデスの上に載せる事で打点を200上昇させる役割があり、これによって成立するワンキル(後述)ありと、多岐に渡る用途を持つモンスターです。


フォトンストリーク・バウンサー
生ける聖杯。
一度限りの無効効果であるため創造の代行者ヴィーナスのような繰り返し効果の宣言を行えるカードには弱いのですが、テキストからは読み取り辛い「相手ターンでも使用可能」「ダメージステップでも発動可能」の2つの裁定が強力です。
インゼクター相手に非常に有効で、除去できる手段も限られていますから、隙を見ての召喚をイメージしておくと良いです。


No.25 重装光学撮影機フォーカス・フォース
バウンサーとほとんど同様の効果を持つ一方、こちらはレベルによる制限があります。
当然対象外となるレベル4以下の効果に対しては何の脅威にもなりませんし、「ランク」に対しても無力と、使い辛さが目立ちます。
ですが、バウンサーと異なる点として2つポイントがあり、そのどちらも大変有用なのできちんと頭に留めておく必要があります。
まず1つは「効果の発動を受けずとも無効効果を適用できること」です。
バウンサーは「発動された効果を無効」にするのに対し、フォーカスフォースはまだ発動されていない効果に対して事前に効果を使っておけたり、永続効果に対しても有効であったりします。
前者は禁じられた聖杯+カタストルなどのレアケースぐらいでしか適応できませんが(バウンサーの場合返り討ちに合ってしまうが、フォーカスフォースなら発動が有効か確認してからアタックできる)、後者はトラゴエディアを除去するのに重宝します。
聖刻においてバトルフェイズ中の攻守3000トラゴエディアを処理できるカードは現状これのみです。
2つ目は攻撃力が2800であること。バウンサーよりも100高い数値です。
たかだか100だと侮ってはいけません。まずそのバウンサーを一方的に破壊できます。バウンサーを相手にすると効果の発動は無効にされてしまうため、6エクシーズで処理を図るには打点で押す他ありません。フォーカスフォースは現状6エクシーズの最大打点です。
2800は現環境における一つの基準でもあり、レダメ・ゴーズ・ダムド・ラヴァルステライドと2800である事の意味は大きく、バウンサーとの2択の場面においては、しっかりと検討して採択を行う必要があります。
またレベル4以下で致命的な効果モンスターと言えばインゼクターが真っ先に頭に浮かびますが、これらはホーネットやグルフを装備するとレベルが5以上となるため効果の適用範囲内です。


甲虫装機エクサビートル
墓地に触れる6エクシーズである他、フィールドに表側で存在するカードを墓地に「送る」事ができます。破壊耐性に有効な他、ストレートに除去を行えるカードはこれしかありません。
両効果とも他に代わりの利くカードがないので、地味ながらもしっかりと仕事を持っている1枚です。


聖刻龍王−アトゥムス
圧倒的な展開力をもたらす、聖刻の主軸です。
聖刻における運用方法・展開パターンについては詳細を後述します。
今ここで記しておくべきは、サーチ先はドラゴン族全般に共通していると言うこと。
選択肢はレダメ択一と言う訳ではなく、条件を満たすドラゴン族なら何でも可能です。
現在でもコアキメイルドラゴをシルバーバレットする戦略が適用されていますが、過去のプールに遡るか、あるいはこれから先のリリースに際しても、「ドラゴン族」と言うだけで一目置く価値があります。


迅雷の騎士ガイアドラグーン
実質のレベルは7ですが、そうして運用されることはまずないでしょう。
このカードのお陰でかなり胡散臭い動きをするようになりました。後述している4つのキルパターンの内、3つはガイアドラグーンの存在があるがために成立しています。
ランク5・6のエクシーズモンスターの打点は全て2600が保障されるようになってしまいましたし、デメリットを消失させる術まで得ました。
今までエクシーズモンスターに対しては無力だった精神操作が一転して超優秀な除去に変わるなど、環境に対して大きな変化をもたらした1枚です。
ランク5・6モンスターは相手の精神操作で1:0交換を食らってしまう可能性があるため、場に残す際はそのリスクについても検討する必要があります。


聖刻のシステムはリリースしたモンスターの代わりに高レベルのバニラを提供してくれるものです。
出てきたバニラの戦力的価値はゼロに等しいためエクシーズの素材として使うこと自体は全く惜しくありませんが、普通にそれを行っては2枚消費で1体を召喚、あまり強い動きとは言えません。
アトゥムスを筆頭とする何体かはアドバンテージ面でもプラスをもたらしますが、召喚ないしは効果の発動に失敗すればたちまちアドバンテージを失います。
とは言え単体で戦えるようなスペックを有していない以上、積極的なエクシーズを行うしか無いため、実のところギミックそのものは非常に脆いのです。

基本コンセプト

この問題を解消するためには、行動に踏み切る前段階において出来得る限りのリスク解消に努め、かつ同じリスクを後で踏まずに済むよう、一度通した手の決定力を高める構造が求められます。
よって、ワンターンキルへの特化が基本コンセプトです。
リストがまだあまり多く出回っていないため他にどんな型があるのか良く知らないのですが、聖刻を一番強く使えるのはこの方向だと僕は確信していますし、ほとんどの方も同様に考えていることかと思います。
ちょうど2年前にリリースされたインフェルニティがこれと同じ性質を持っており、目指す方向性として良いサンプルとなるでしょう。

キルパターン

今日に至るまでの中でいくつかの聖刻のリストを見てきましたが、全体的に見て聖刻龍−ネフテドラゴンの枚数が少なめでした。
話を伺った限りでは「レベル5が使いにくい」といったものがほとんどです。
聖刻のワンキルパターンと言えばガイア・ガイア・グスタフ・エレキの12700パターンが有名ですが、他にもいくつかキルルートがあるのをご存知でしょうか。
最終的な着地点は4つ、そこに至るまでの間はより多くの分岐が存在しますが、その中でネフテが絡めないルートはホンの僅かしかありません。
採用に関して賛否両論分かれているようですが、個人的には入っていない方が疑問を感じる1枚で、これは立派なキルパーツです。状況次第ではシユウよりも優秀であると言えます。
僕が浜松・関東の2日間で使用した聖刻には3枚のネフテドラゴンが積まれており、これから記す内容はそれを前提としたものとなっています。


その点を踏まえた上で、まず1ターンキルに向かう際の簡単なまとめを行います。


初動
○聖刻龍−アセトドラゴン
○場のモンスターをリリースして上級聖刻を召喚
○何かしらの手段で墓地に置かれた聖刻を蘇生
(以下相手フィールドにモンスターが存在している場合のみ可)
△聖刻龍−トフェニドラゴン


展開要因
○聖刻龍−ネフテドラゴン
○聖刻龍−シユウドラゴン
(以下6枚重複不可)
△レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン
△死者蘇生
(以下4枚召喚権が残っている場合のみ)
△エメラルド・ドラゴン
△エレキテルドラゴン
(以下2枚ネフテorシユウのコストで運用可能)
△聖刻龍−アセトドラゴン
△聖刻龍−トフェニドラゴン


8000のライフを削りきるのに最低限必要なカードは初動1枚+展開要因2枚の計3枚で、大抵の組み合わせでキルに辿り着けますが、記載してあるように条件的なものもいくつかあり、場の状況に左右されがちです。
展開要因項の条件分岐で大方問題ないとは思うのですが、後述の計算式含め大まかな検討しか行っておりませんから、かなりアバウトなものであるという事は理解しておいてください。
今の段階で僕が例外として認識できているのは…


聖刻龍−トフェニドラゴン
+エメラルド・ドラゴン(orエレキテルドラゴン)
+聖刻龍−ネフテドラゴン


の3枚パターンで、この3枚だけはどうしてもキルに辿り着けず、ダメージ総量も5100しかありません。前述した、ネフテの「レベル5」の部分が問題となるケースです。
ですが、逆に言えばネフテのレベルが展開に支障を来たすケースはこのくらいだと思いますので、一般的に危惧されているほ5という数値は問題視されません。
むしろ展開に幅が生じ、プラスとなる場面も多いくらいです。(プレアデスパターン)。


ともあれ、このケースを除けばどの組み合わせも基本的には下記4パターンの内どこかに行き着きます。


■12700パターン
3枚から叩き出せる打点の最大値で、聖刻ワンキルの中で最も有名なパターンです。


例)アセト シユウ シユウ
アセト
シユウ エレキ
シユウ エレキ エメラルド
シユウ アトゥムス
シユウ アトゥムス レダ
シユウ アトゥムス レダメ シユウ
アトゥムス レダメ アトゥムス
アトゥムス レダメ アトゥムス レダ
アトゥムス レダメ アトゥムス レダメ エレキ
ガイア ガイア エレキ グスタフ
2600 + 2600 + 2500 + 5000


レベル6ドラゴンを3体用意できることが条件です。
途中で挟む聖刻は6バニラに変換されるので、最後にシユウを立たせればアセト・ネフテ・シユウの3枚でも可能です。
8000ライフからの超過分は実に4700。それ以下の打点が相手のフィールドに散らばっていても戦闘の超過ダメージで捻り潰せます。
成金ゴブリンを採用している構築ではほとんどこのパターンに向かうこととなります。


また、ネフテを過程で用いれば、最後のレダメの蘇生先をこれにすることでガイアを1体諦めて相手フィールド上のモンスターを1体除去できます。
ダメージが3100落ちますが、9600でも十分ですし、裏守備・大型の除去には大変有用です。
最後に展開するシユウをネフテの投げつけ効果に用いてプレアデスパターン(後述)に移行するのもありです。


■10100パターン
レダメの絡む変則パターンです。
基本的には12700パターンと同じ動きであるのに対し、ハンドに引いてしまった分アトゥムスからのリクルート効率が悪くなってしまうため、打点がやや下がります。


例)アセト ネフテ レダ
アセト
ネフテ エレキ
レダメ エレキ
レダメ エレキ アセト(エレキのレベルをコピー)
レダメ アトゥムス
レダメ アトゥムス レダ
レダメ アトゥムス レダメ エレキ
グスタフ ガイア エレキ
5000 + 2600 + 2500


相手の場の総計打点が2100以内なら圏内です。
それ以上の数値、ないしは戦闘ダメージを見込めない単一の妨害要素が相手フィールドに存在する場合は、下記8100パターンに移行します。


■8100パターン
これもレダメ絡みの変則型で、10100パターンの派生系です。
高い打点、破壊耐性、裏守備等の不確定要素を除去するためにトレミスをプレイする動きになります。


例)トフェニ エレキ レダ
トフェニ
エレキ エメラルド
アトゥムス
アトゥムス レダ
アトゥムス レダメ エレキ
アトゥムス エレキ レダメ(0のレダメを除外)
アトゥムス エレキ レダメ トフェニ
アトゥムス レダメ トレミス
ガイア レダメ トレミス
2600 + 2800 + 2700


レダメはヴェーラーのケアにも繋がるため、詰めに向かう場面では大変扱い易い1枚です。
なお、ダメージ量的に成金の入った構築ではこのプランは取れません。


■8000パターン(プレアデスパターン)
ネフテが2体以上絡むか、ネフテの効果を用いて相手フィールド上のモンスターを除去する必要がある場面においてこのパターンが用いられます。


例)アセト ネフテ ネフテ
アセト
ネフテ エレキ
ネフテ エレキ エメラルド
ネフテ アトゥムス
ネフテ アトゥムス レダ
ネフテ アトゥムス レダメ ネフテ
アトゥムス レダメ プレアデス
アトゥムス プレアデス(効果で0レダメ戻す)
プレアデス レダ
プレアデス レダメ エレキ
トレミス レダメ エレキ
2700 + 2800 + 2500


途中でネフテの除去を挟むため損をしにくく、ここにヴェーラーを使ってくれればプレアデスを使ったビートプランに乗り換えれます。
主にサイド後有効で、相手の様子を見ながら展開していくのに最適です。
サイド後はエフェクトヴェーラーや増殖するGのような面倒な妨害が多いため、動きの停止を図りやすく損の少ないこのプランを僕は好んで採用します。
8100パターン同様、このパターンも成金を発動してしまうと成立しません。


なお、この展開パターンは先行時ブン回しへの派生があり、
・プレアデス(素材1) レダメ シユウ
・プレアデス(素材2) アトゥムス レダメ(攻守0)
のどちらかで構えることもできます。
ただしいずれも打点が足りておらず、結局激流葬に弱い他ブラックホールまで致命的な選択肢となってしまいますから、先行初手での展開はあまりオススメしません。


※補足:聖刻龍4体目以降の用途
上記の通り、3枚もパーツがあれば8000のライフを削りきる事は可能ですが、4体目の余剰分があれば何かしらの妨害要素に対するケアに回すことができます。


例)アセト ネフテ シユウ シユウ(余剰分)
アセト
ネフテ エレキ
シユウ エレキ エメラルド
シユウ アトゥムス
シユウ アトゥムス レダ
シユウ アトゥムス レダメ エレキ
アトゥムス レダメ アトゥムス
アトゥムス レダメ アトゥムス レダ
アトゥムス レダメ アトゥムス レダメ シユウ
ガイア ガイア グスタフ ネフテ
ガイア ガイア グスタフ シユウ エレキ


10200が確定している状態でレベル6モンスターが2体余っています。
2体を合わせればエクシーズが行えますので、下記の選択肢から一つを選べます。


トレミス
 キルに邪魔な要素をバウンス
フォトンストリークバウンサー
 ゴーズのケア(トークン発生効果を無効にして1000ダメージ)
フォーカスフォース
 トラゴエディアのケア(バトルフェイズ中にも効果が使えるため、攻守を0にできる)
聖刻龍王−アトゥムス
 デッキ内にコアキメイルドラゴがあればトラゴーズフェーダー全てをケア
甲虫装機エクサビートル
 ・ラヴァル相手にかかし等の妨害に合った際、メイン2で墓地の砲兵を吸い込んで爆発ケア
 ・場に残ったゴーズ・フェーダーの処理

今回はここまで

基本的な部分のお話は以上とします。
次回、次々回はここまでの話を踏まえた上で浜松・関東における実際の構築事情について書きます。


それではまた!